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Part1
日常の時間、回復の手続き

Part2
「なんだろう、この違和感は」

Part3
家族は創るもの

Part4
「見張り塔から」をめぐって



 柳美里
 Profile

 福田和也
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portrait
柳美里 vs 福田和也  (page 4/4)
2002.01.07

【Part4 「見張り塔から」をめぐって】
編集部
 最後に「見張り塔から」についてはいかがですか。

福田和也 私が火種をつけてしまって……。でも、あの連載に正面から書いてきたのは柳さんだけ。

柳美里 というか、あれは……、誰かが反論しなければ成立しないんじゃないか、誰も何も言い返さなかったら厳しいんじゃないかという気持ちが大きかったんです。だから、正直言うと、書いていて楽しかった(笑)。

福田 世間では、下世話な話で言うと「福田・柳美里決裂」みたいな貧しい目で見られるけども、今回続けて対談させていただいて、非常に贅沢だし、いいですよね。その機会を得られたことはありがたかったと思います。

 ただ、私は、福田さんと初めてお話したのは1995年の『図書新聞』でしたけれど、初対面のときから話しづらいという感じを持ちつづけているんです。

福田 はい、わかりますよ。

 なぜなんでしょう?

福田 顔が嫌いなんでしょうか(笑)。

 福田さんはどうなんでしょうか?

福田 僕は滅茶苦茶みたいでいながら、けっこう受動的な性格なので、やっぱり柳さんがある種ちょっと……、ためらいというのではないのですが、違和感をもっていらっしゃることは感じていて(笑)。まずいなと思いながら、でもそれを無理矢理掘り出そうとすることもできないし、掘り出そうとすることもよくないんだろうなと、図書新聞の企画で新宿のビルで話したときからそう思っていますね。

 あのときは終わったあとに。

福田 飲みに行ったらいなくなっちゃった。

 福田さんから後日、「朝まで飲んでいて体調が悪く、話がはずまなくてすみませんでした」という内容のお手紙までいただいてしまって……。実は私の方がなにをどう話していいかわからなかった……と言うよりも、やっぱり緊張するんでしょうね、面と向かうと。

福田 普通は逆に言われるんですよ。文章だけ読んで来ると、いきなり殴ったり蹴ったりするような奴じゃないかと思われてるから(笑)。会うと「こんにちは」と言うし、思っていたよりましじゃないと言われることが多いんです。今日はどんなひどい目に遭うのかと思って来たら、そんなに変な人じゃなかったみたいな。そう言われることのほうが多いんですよ。

 うーん……、福田さんは苦手ではないんですが、話すこと自体が苦手なのかも……。

福田 ただ、僕も正直に言うと、話すのよりも書く方が何倍もいいんですね。江藤淳さんを見ていて絶対にかなわないなと思ったのは、書くのもすごいですけど、あの人は話がすごいんですよ。講義もぜんぜんメモを準備してこなくて、バッと喋って、しかもそれがそのまま活字に起こせばいいような、という芸当ができるんです。

 でも僕はそれができなくて。話すのはいまでも、講演などは義理がないと引き受けないですけど、でもやりたくないですね。だから僕も本当は書いていた方が楽です。

 私も講演、シンポジウムは一切受けないんです。1回やって……。

福田 僕のゼミに来てくれた。

 いや、あれはもう。

福田 特別サービス。どうもありがとうございました。

 あれ以外にも、1回とち狂って受けちゃったんです。定時制高校だったんですが、1時間の約束だったのに、15分で終わってしまった。学生といっても、昼は仕事をしている人たちだから明らかに疲れているんです。最初から顔をふせて寝ている人もいて、苦しかったですね。

福田 15分はさすがにすごい(笑)。でも、やりにくいときはありますよね。僕も自衛隊に頼まれたことがあって、自衛隊関係の頼みは前向きに引き受けるから茨城の基地まで出向いて行ったら、これはもう当たり前ですけど、隊員の人はみんないやいやで来ているんですよね。それを前に話すのは辛かったですね。西部邁先生だとそこで一念発起してアジれるんでしょうが、とてもアジれないですよね。

 話が尽きませんが、そろそろ締めくくらないといけないですね。

福田 編集者が目で合図していますから。
 やはり作家と批評家の関係はむずかしいですね。江藤さんは、最後まで付き合えた作家の友だちというのはいなかったと思うんです。小林秀雄や永井龍男といった先輩では何人かはあったと思うんですけど。そういう意味では若い時からずっと付き合っていける、そういう作家が何人かいればなと。

 もちろんベタベタするのではなくて、それこそ何年かに一度でもどこかで会ってちょっと話ができるような関係を。要するに社交的なことではなくて、本質的なことをちょっと話せるような関係を自分はもてるのかな、と考えますね。

 私の場合は、作家では町田康さん、批評家では福田さんだけですよ。他には誰もいません。康さんだってもう半年以上会っていません。会ったってペラペラ喋るかというと全然で、お互い困惑して目をしばたたかせてばかりいますからね。

 私は、話したい、という感情が、人間関係では一番重要だと思っています。話したくない、と思ったら、友人、恋人、夫婦、親子、兄弟、どんな関係も終わってしまいますからね。話したくない人がほとんどなんですが、福田さんとは話したいんです。でも会うと話したいことの10分の1も話せない。

 新聞や小説を読んでいるときに、福田さんはこれをどう考えているだろう、とよく思うんです。今度会ったときに話そうと。でもそれを覚えていたとしても、話せない。私にとってはとても不可解な存在です。福田和也という人は……。

(全文終了)

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