【Part1 環境の激変】
日本経済を取り巻く環境は激変した。1990年代以降のバブル崩壊への対応に失敗した日本は、いま混迷のただ中にある。日本経済の基盤が崩壊しつつあるなか、外的な変化が急速に日本経済に調整を強いている。
日本経済を取り巻く環境の激変を、筆者は「三つの荒波」と「一つの地殻変動」と表現している。三つの荒波とは、国際政治情勢の変化、国際経済情勢の変化、そしてITの急速な進化、の三つである。
国際政治情勢の変化は冷戦の終焉よってもたらされた。冷戦の時代、対立の図式は社会主義 vs 資本主義であった。東 vs 西、イデオロギーの対立が国際紛争の基本図式であった。サミュエル・ハンティントン氏が指摘しているように、冷戦時代の覇権を決定する最大の条件は軍事力であった。冷戦終焉後、覇権確保の条件は経済力に変化した。
冷戦終焉後、初めて発足した米国の政権はクリントン政権であった。クリントン政権は経済の強化にエネルギーを注ぎ込んだ。とりわけ情報通信を中心としたハイテク分野、知的所有権、金融、そしてバイオテクノロジーなどの分野が戦略産業分野と規定され、その強化に国家的努力が払われた。
米国にとって日本は、かつては西側陣営の重要な拠点国であり、庇護の対象であったが、冷戦終焉後は仮想敵国として位置付けられるほどにそのポジションは変化した。経済の競争の時代にあっては、米国は日本と言えども容赦せず攻め込んでくる。現実に、日本市場は相当程度、米国企業に席捲され始めている。
第二の変化は国際経済情勢の変化である。アジア地域、とりわけ中国の技術力、生産力の増大が目覚しい勢いで進展している。かつて日本が1ドル=360円の固定為替レートに守られ、輸出を中心に製造業の飛躍的発展を遂げたのと同様の現象が、中国をはじめとするアジア諸国で生じている。製造業の拠点は必然的にアジア地域へシフトする。日本にはアジア製品が大量に供給され、激しい価格競争が展開されている。
近年になり、メガコンペティションの荒波は非製造業分野に着実に浸透し始めている。外食、流通、金融などの分野においては、外資系企業を巻き込んだ熾烈な競争が展開されている。ここ1、2年、本当の意味での大競争が日本市場で発生し始めている。
第三はIT(情報通信技術)の急速な進化である。情報処理技術の進化と、通信技術の発展が融合され、極めて大きな経済効果が発生している。いかなる企業と言えども、ITの進化にキャッチアップすることが不可欠になっている。ITに対応できない企業は、世界のメガコンペティションの嵐の中で没落せざるを得ない。
一つの地殻変動とは、地価下落が依然として進行していることである。地価下落により企業のバランスシートが刻々と悪化する。多くの企業が債務超過に陥り、資金の供給を断たれ崩壊してゆく。バブル崩壊後の経済低迷をより深刻化させてきた経済政策のもたらした代償は計り知れなく大きい。日本企業を取り巻く環境の激変に対応し、日本企業が生まれ変わらねばならぬこの時期に、経済が著しく停滞していることは日本の不運と言わざるを得ない。