小泉政権下での初の国政選挙となる参議院選挙。
小泉人気により自民党が圧勝すれば、党内守旧派が勢力を盛り返すのか。
政党の分裂による政界再編制は本当に起きるのか。
いま一番知りたいそのポイントを、田原総一朗氏に聞く。
(聞き手:丸山孝)
―― 小泉首相は支持しているけれども、自民党支持ではないという人にとっては、非常に悩ましい選挙になってしまいました。国民は今回の参議院選挙で、一体何を選ぶことができるのでしょうか。何を選ぶことになるのでしょうか。
田原総一朗 何を選択するのかということで言えば、たとえば野党を見ていると2種類ありますね。共産党と社民党は「構造改革をやったら大変なことになる」と言っている。とくに中小企業が大変なことになるからと反対しています。
一方、民主党と自由党は「構造改革は、そもそも自分たちが言い出したのだ」と言っている。オリジナルは自分たちで、それを小泉内閣が寸借したのだと。そんな小泉内閣には構造改革はできない、自分たちでないとできないと主張しているわけです。
だから、構造改革はやるべきだけどできないというグループと、構造改革をやったら大変なことになるというグループと、野党にはこの2種類あるわけですね。このように野党が対立しているわけですから、小泉さんはきわめて楽なんですよ(笑)。
―― 昨日(7月15日)の「サンデープロジェクト」における党首討論でも、そのような形で野党の分裂がはっきりと現れてしまいましたね。
田原 そう。その中で、小泉首相は「構造改革をやるべきだ」と言っているわけです。だから大雑把に言うと3つに分けられます。まず1つが、構造改革をやると言っている小泉さん。しかし2つ目に、構造改革はやるべきだけど実はできないと言っている鳩山・民主党と小沢・自由党。それから3つ目に、社民党と共産党はやったら大変なことになると言っている。
この中で、国民がどの党を選ぶのかという選択ですよね。
そして構造改革とは何かというと、これは要するに今までの自民党政府が言ったことのないことを初めて言っているわけです。構造改革すると、一時的に失業者もたくさん出る、倒産も増えますよと、こういうことです。しかし今までは、自民党は「倒産を出さない、失業者も出さない、そのためにわが党はこういうことをする」と言ってきた。今は「出します」と言っている。これは前代未聞の内閣だと言っていいと思います。
その中で国民は、どれを選ぶかということになるんでしょうね。
―― 今回はどうやら自民党の圧勝になりそうな気配です。そこで問題は、小泉さんを支持する人が自民党に投票することによって、逆に守旧派を助け小泉改革の足を引っ張ることになってしまう可能性があります。
田原 そこが、多分そうならないと思いますね。
―― そうですか。非常に重要なところですが、その理由は?
田原 もしも守旧派が小泉さんを攻めて、追い詰めれば、小泉さんは衆議院解散にもっていくと思う。もし小泉さんが解散したら、そのとき彼は首相ではあるけれども、自民党を離党すると思う。政界再編になります。
そして国民はその政界再編を絶対支持しますよ。鳩山さんや小沢さんもそれを待ちかねている。
そのことを自民党の守旧派は百も承知ですよ。もし小泉さんを追い詰めたら、自分たちがおいてきぼりにされると。自民党というのは融通無碍、悪く言えば理念なんてまるでないのだから、守旧派は小泉さんに協力するんじゃないかと私は思っています。つまり守旧派が小泉さんを追い詰めるのか、それとも小泉さんに協力するのかという話なら、もう協力せざるを得ない。協力しなければ、自分たちがおいてきぼりですからね。
―― すると、小泉支持者が自民党に票を入れることは矛盾しないということになるわけですね。
田原 しないんです。
―― それは有権者としては非常にありがたい。あまりむずかしく考えなくてもいいということになりますから。
田原 むずかしく考えなくていいんですよ。ひねるのが好きな人は、いくらでもひねればいいけど(笑)。
でも私は、ほんとうはその成り行きでは面白くないと思っている。つまり守旧派が追い詰めたほうがいい。そして政界再編に行ってしまったほうがいいと思っているんだけれども。
―― 最後にその政界再編についてですが、これは時期が多少早いか遅くなるかを別にして、必ず起きるであろうとご覧になっていますか。私は最近、実は起きないのではと感じ始めているものですから。
田原 それがなかなか微妙ですね。自民党はさっきも言ったように、融通無碍ですから。全面的に小泉さんに協力したら、ちょっと小泉さんは逃げようがないですからね。
その場合自民党という巨大政党が残ることになりますが、その一方で小泉さんを継げる人が自民党にいるかどうかという問題がある。だから、たとえ守旧派の人たちが協力をしても、小泉さんのほうがあえてハードルを高くして、政界再編へ行く可能性もある。
―― その場合、いわゆる中道右派と左派に分かれることになるでしょうが、しかし日本人の場合、中道「中派」ともいうような真ん中がものすごく多いように思います。何によって線引きをするのがいいと思われますか?
田原 右派は「国家あっての国民」だと考え、左派は「国民あって国家」だと考える。ここが一番わかりやすいんじゃないかと思いますね。そこで分かれるんじゃないですか。