【Part5 今後の日本の課題】
問題は日本だ。80年代は経済力をバックにアジアで存在感を増し、サミットでも一定の発言力を有していたが、バブル崩壊後は経済の立て直しにもがき苦しみ、自分の頭の上のハエを追うのに精一杯というのが実情だった。その結果、日本は国際政治の中でいつのまにか発言力が落ち、外交も衰弱してしまったといえよう。そこへ、外務省の不祥事が相次いで発覚し、その対処に追われていたため、一層外交戦略の無策が露呈してしまったとみることができる。
同時テロ問題で、日本は湾岸戦争時にカネだけしか出せなかったというトラウマ後遺症があったせいか、米国支援、テロ対策、後方支援策などの特別措置法の作成に走った。しかし、テロ発生と同時に動いたアメリカの最初の2〜3週間の動きは、軍事的準備とともにタリバンへの外交的包囲網の形成とアメリカ支援同盟の形成だった。このためアメリカは、常任安保理事国の英、仏、露、中国の支援とりつけに全力をあげるとともに、イスラム国のサウジアラビア、インドネシアの首脳と会談、さらにアフガニスタンを取り巻くパキスタン、インド、イラン、中央アジア諸国などへの外交努力に力を注いできたのである。
実は日本は80年代以降、これらの国々との接触が深く、外交的橋渡しをするチャンスが大きかったのである。インドネシアは日本の最大援助国であり、インド、パキスタン、アフガニスタンとの援助、貿易関係もきわめて深い。イランとはこの夏に平沼経済産業相が訪問し、石油採掘の協定を結んだばかりだし、サウジなど中東からは日本の石油輸入の86%を依存している。さらに中央アジア諸国、とりわけウズベキスタンは世界でもっとも日本を友好国とみなしている国なのだ。
こうした関係をもちながら、ほとんど先手の外交と橋渡し役をすることができず、後手後手にまわってしまったのが実態だった。もしここで外交的役割をはたしていたら、それこそ“新しい戦争”で、目に見える“日の丸”を立てることができただろう。
今後の日本の課題は、冷戦構造がまだ残っている極東アジアで新しい関係を構築することだ。99年から初の日・韓・中の首脳会談が実現し、日本と中国、朝鮮半島の極東アジア地域に新しい動きを形成しつつあったが、教科書、靖国問題で頓挫してしまった。中国の急成長に脅威を感じでいるのは、アメリカだけでなくASEAN諸国などアジアも同様だ。それだけに、アジア諸国もまた日本が中国と関係を改善し、国際的役割をはたすことを望んでいるのである。
今後10年間で、日本が中国、朝鮮半島との関係を再構築し、極東アジアに新たな地域協力のネットワークを作らない限り、日本はアジアにおけるセカンド(2番)あるいはサード(3番)・リージョナルパワーの国に転落してしまうのではないか。
ともあれ、価値観が多様化し、一国が世界のヘゲモニーを握ることが難しくなった時代において、どのように各国、各民族などが共生し得るか――そのシステムとともに、強者の控え目なふるまい、バランス感覚ある判断こそが、国際情勢の安定化にますます重要な意味をもってきたともいえそうである。