ネットバブルが崩壊し、近年盛り上がっていたベンチャーブームに逆風が吹く中、
いまこそ見つめるべきものは何か。持つべき心構えとは何か。
ベンチャーの雄、H.I.S.の澤田秀雄代表に聞いた。
(聞き手:丸山孝)
【第1回 根を張った経営で、初心継続を】
―― 1999年はいわゆるネット・ベンチャーの大流行で、しかし2000年2月頃を頂点に、今は「ネットバブル崩壊」と言われています。そうはいっても日本でベンチャー企業がどんどん出てこなければいけないのは確かです。一連の流れをずっと見ておられて、いまベンチャー企業家が持つべき心構えとして、どんなことを挙げたくなりますか?
澤田秀雄 私なりの考えですけれども……。まず、常にチャレンジ精神を持つということです。当たり前のことですけれど、ベンチャーですから、いかに初心のチャレンジ精神を継続できるかじゃないでしょうか。やはり「継続は力なり」ですからね。
人間はどうしても、うまくいけば調子に乗りすぎますし、悪くなればすぐシュンとして萎えてしまいます。
だからどんなときでも、初心を継続していくという気持ちが必要だと思います。特に若い人には、それが大切ではないでしょうか。
―― 継続し続けるにあたっては、何が重要でしょうか。
澤田 継続するために必要なのは、夢とか目標をきちんと定めることではないでしょうか。ただ、あまり大きな目標で達成に50年も100年もかかるというのでは、途中で息切れして走れなくなってしまいます。かといってあまり簡単な小さな目標だと、すぐ達成して"なんだこんなものか"とそこでおごってしまい、継続ができなくなります。
ですから私がいつも言うのは、短期、中期、長期で目標をつくるということです。短期とは「簡単でちょっと頑張ればできる目標」ですね。中期というのは「3年から5年、本気でがんばれば達成できるような目標」。それと長期の壮大な目標。これは「達成できるかできないか、大きな夢物語」で、それはまさに一種の夢でいいと思うのです。
たとえ1キロであろうが10キロであろうが、ゴールがあるから走れるわけです。そのゴールを3段階くらいにわけて、目標や夢を明確にすれば継続しやすくなると思いますね。
―― いま「ネットバブル崩壊」といわれ、1年前であれば急成長していた会社が、一転して業績が落ちているケースが増えています。その現象を見て、何か共通の問題点としてお感じになっているところはありませんか。
澤田 各社とも手を打っているでしょうから、トータルな印象ということになりますが、企業とは積み重ねるように大きくしていかなくてはいけないと思うのです。たとえどんな角度であろうが、右肩上がりに。それなのに株式公開だけを夢見てみたり、公開してお金が入ってくることをゴールにしてしまったりというような、非常に経営を安易に考えておられたのかな、というケースはありますね。
たとえば強風が吹いたとき、根がしっかり張って育っていれば、揺れたりたわんだりはしますが、そこでポキッとは折れないですね。逆に根がしっかりしてないと、ちょっと風が吹いただけで折れてしまいます。それと同じですね。経営というのは、やはり決して甘いものではありませんから。
1999年頃はIT関連のベンチャー事業を興して株式公開をめざし、一攫千金までを一気に駆け上がろうという風潮が世間にあったのは確かです。その点は、考え方というか、根が浅かったのではないでしょうか。私自身、雑誌の取材でそれに対する警告を述べたこともありました。
―― 株式市場からお金が入れば、数字上は一見合理的ですが、あくまでお客様から得たお金で企業が成立していかないといけないと思うのです。そのうえで、株式市場から入るというならいいのですが。
澤田 そうです。成長するために株式市場からお金を集めるのであって、お金を集めることが目的で公開するのは本末転倒ですからね。だから原則としては、サービスしたり技術を提供したり、商品を提供したりして、お客様からいただいた利益だけで発展していけばいいし、それが普通なんです。
しかしもう少し大きな設備投資をすれば、もっとお客様に喜んでいただける、もう少し早く成長できる、もう少し世の中のために大きなことができるという場合がある。だから、市場から資金を調達するのです。
―― そういうときがありますね。工場をつくらなくてはいけないとか。
澤田 そうです。まとまったお金が必要になるときがあります。だから、この投資をやることによって、よりお客様にサービスを提供できる、もしくはより大きな発展がのぞめるという目的で公開して、市場からお金を集めるというのならいいと思うのです。
しかし、そこを誤って、自分が裕福になるために、もしくは会社のために株式公開するというのは、当然ながら間違いです。そういう考え方の経営をしている会社は、おそらくほとんど駄目になっていくと思いますね。
本来、公開は「目的」ではないのです。お客様に喜ばれる事業をする、もしくは事業を発展させるために株式公開するのであって、あくまで「手段」なのです。1999年頃の加熱ぶりを見ていると、本来あるべきその考え方が、半分ゆがみかかっていたのではないかということは感じていました。
ただ最近は、今度は逆にいささか叩きすぎではないかと思う面もあります。
―― それはおっしゃるとおりですね。