【第5回 破綻の前に目を覚ませ】
■自立心を取り戻せ
○福田和也 さっきおっしゃった本当に数パーセントのですね……。
●小沢一郎 リーダー層が駄目なんですよ。
○福田 大きな哲学、グランドデザインを描く人間がいるのか。あるいはそれを指導できる人間をどう育てるのかということが、やはり一番大きな問題だと思うのですが。
●小沢 そう。だからそれはやはりある意味で、時代と国民の意識がどう向き合うか、ということでしょうね。
日本ぐらい2000年という長きにわたって、最近の研究ではそれこそ縄文の時代から、こんなに豊かで平和なところはないわけですから。だから、そういう強いリーダーシップといったことが必要なかったんでしょうね。
それが明治時代はたまたま、黒船が来てね、あるいは中国や周辺諸国の植民地化というかたちで帝国主義が押し寄せてきた時に、目覚めたんでしょうね。だけど、戦後は豊かになって、また元の木阿弥みたいに(笑)。
○福田 それはですから、自立という問題ともつながりますね。
●小沢 はい。だからもともと各地域で自立してやっていた、その自立心をまた取り戻せばいいと思うんですよ。変に中央統制、官僚統制に慣れっこになってしまって、そこに物質的豊かさが一緒になってしまったから、何というか……そういう日本人の本来持っている資質まで失ってしまったんじゃないんですかね。
○福田 今風の言葉で言うと、リスクを取ってもチャレンジをするということ、さらに言えば正義を通す気概というものが、やはり一番なくなってしまった気がしております。
●小沢 そうでしょうね。だから僕がいつも言っているのは、このままずっとうまく行くのなら別にいいんですよ、日本人というのは基本的に変えたくないのが気質なんだから。それでうまく行くのならいい。けれどうまく行かないから、今のごちゃごちゃになっているわけでしょう。
そうしたらやっぱり、変えなきゃならんでしょう。そして僕は確信していますが、変えうる能力と資質を日本人は本来的に持っているんです。
だから、それをうまく活かすようにして、21世紀の情報化時代の社会を、それこそ「日本発の情報化社会のモデル」をね、世界に発信するぐらいの気概を持たなければ。
グローバリゼーションというのはアングロサクソンのルール化だという意見がちらほらあるけれども、それがけしからんなどと言っているのも馬鹿げたことでね。
そんな負け犬の遠吠えみたいな、引かれ者の小唄みたいなことを言ってちゃ駄目だと言っているんですよ、この日本人ともあろうものが。
確かにそういう面もあるが、仮にそれが真実だとしても「私は鎖国して暮らします」というわけにいかないんだから。
それを奇貨として、むしろ自分のものにして、彼らがまだ到達していないより良いデザインをね、日本人自らが考えだし、その日本発のモデル社会を欧米も取り入れざるをえないというくらいになる、それくらいの気概を持たなければ駄目だと言いたいんです。
■他人事ではない財政破綻
●小沢 経済がいいと言ったって、今のままでは財政破綻はもう間近ですよ。だって当分借金しつづけなければ、もう予算編成できませんから。そうするとどんどん借金が溜まる一方で、これを返すには超インフレしかないですよ。
○福田 財政赤字が1000兆円になるのはすぐですね。
●小沢 すぐですよ。だからそれは財政破綻であり、超インフレですよ。財政インフレです。今のままではそれしかないのだから、解消するには。
○福田 どう考えても、他に答えはないですね。
●小沢 ないですよ。
○福田 だからもうクラッシュするのが明らかであれば、クラッシュを座して待つのではなくて、やはりクラッシュを利用するシナリオをつくらなければいけないのではないでしょうか。
●小沢 そう。もちろんクラッシュを避けなければいけないというのが先としても、確かにそういうことが言えるでしょうね。
だから僕も次の世代の役人に、「その時のことをちゃんと考えていろ、知恵を出しておけ。処方箋を役人なりに考えておかないと駄目だ」ということはずいぶん言ってきましたね。
○福田 財政当局者は何を考えなければいけないかと言えば、超インフレになった時はもう物々交換ですよ。物々交換になるぐらいのところまでを、最悪のこととして考える想像力と構想力がなければ。
●小沢 それは本当にそうです。国民の立場から言えば、1300兆円と言われる個人金融資産を文字通りパーにすることですよ。これがゼロになるということなのだから。だから「困るのはあなた方だよ」と僕は一生懸命言ってるんです。
インフレになれば困るのは一般国民であって、金持ちはますます金持ちになるだけなのだから。
「他人事みたいなことを言っているけれど、一般の人が困るんだよ」とね。本当にそうなんですから。
だからね、もう少し早く気がつけばいいけどね。本当の破綻が来るまえに。