【第3回 日本人よ、意識改革を】
■明治に見る日本人の可能性
○福田和也 小沢先生は「強国」ではなく「普通の国」という言葉を使われていますが、どちらにせよ、影響力をきちんと国際的に確保していくためには、ある意味でやっぱり一種の強国になっていかなければなりません。
それをどういう形でやっていくのか、何が必要なのかということは、一番大きな問題だと思うのですけれども。さきほど自衛隊による国際貢献という話がありましたが、その他ここが課題だというところはいかがでしょう。
●小沢一郎 もう、基礎的な問題からですね。日本人の意識改革をしないとだめですね。自衛隊をどうするとか何をどうすると言ったって、具体的な話はまだまだ次の段階ですよ。
日本人のこういう温室の、井の中の蛙的国民性や感覚では、もう僕は今以上の日本にするのは無理だと思いますね。
国民性なんてそういっぺんには直らないかもしれないが、でも日本は決してずっとそうだったわけではない。例えば明治の時代というのは、リーダーに負っているところも多いけれど、それとともに国民自身にも大きな視野と、井戸の中から飛び出て大海を見て、その中で自分たちの生存を図ろうという意識があったと思いますよ。
たぶんかなりの庶民の間にもね。だからあの時に、僕の本当に貧乏な田舎だった岩手からでさえも、新渡戸稲造を始めとして、軍人じゃない、世界的に通用するいろんな人物が出ましたよね。そこが明治の時代のすばらしいところだと思う。
やればできるんですよ、日本人は。決して馬鹿ではないから。もう少し理性的に物事を考える癖をつければ、あるいはなんと言うかな……、リーダーシップがあれば、僕はやりとげられると思う。
■現在の日本に対する悲観と楽観
●小沢 いま世の中に、経済社会全体という意味でも、情報化の波が押し寄せてきていて、新しい時代はどうするんだっていう問題が起きていますよね。インターネットでも何でも全部アメリカ経由だから、「これはアングロサクソンの支配だ」という見方もあるけれども。ただそのアメリカでも、この情報化社会の、あるいは社会全体、国全体の青写真というのはまだつくりきれていないですよ。どういう社会にするのかということはね、分かっていない。
日本ははるかに遅れているが、そういう新しい時代の、あるいは新しい社会の青写真をこの日本がつくりあげるという、そういう大きな目標を持ちながら日本人の意識転換をしていくといいと僕は思いますね。
その意味ではこの日本を、自立社会、自立国家、そしてもっとオープンな社会にしていかなければ。当然、それが必要なわけですから。そういう中からね、日本を世界で応分の役割を担える国、そしてそれを実行する日本人にしていかないといけない。
でも今の意識では、まず絶対無理ですね。個別の話で何を言ったって、全体を見る発想がないんだから。さっきも言ったように、外交とか世界戦略なんていうのは皆無なんだから。
そんなことをする必要はないと頭から思っているし、できるだけややこしいことにははまらないで、金儲けだけできる機会を一生懸命探しているという感じですからね。だから、このままでは日本の21世紀は、ちょっと望みがないと思いますね。
厳しい話を続けたけれども、だけど僕は非常に楽観視してもいるのは、一つは日本人の潜在的能力。これはもう絶対あると思う。政治力、経済力、全て含めてね。それからもう一つは、日本人の……、つまり個々の一般国民全体が「このままではいけない、変わらなくちゃいけない」という意識を持っていること。
日本人というのは臆病だし変革嫌いだから、同時に「できれば変わらないほうがいい」「このままでうまく行くことを願う」という意識もあって。両面を同時に一人の人が共有しているけれども、「変わらなくてはいけない、変えなくちゃいけないんじゃないか」という意識がどんどん大きくなりつつあるということは、僕は非常に感じています。その可能性という意味で楽観視しています。
■問われるリーダーのありかた
●小沢 日本社会で駄目なのは、いわゆる役所で言えばキャリアですよ。民間で言えば幹部。つまり本来リーダーシップを発揮しなければならない、そういう連中がだらしないということですよ。これが日本社会の決定的に駄目なとこだね。
日本人はアメリカやヨーロッパの一般の人の教育水準を、低いだなんだと批判しがちだけれど、しかしリーダーはどうかということですよ。それこそリーダーは、日本のリーダーの何倍も働くし何倍も能力がある。そう認めざるを得ない優れたリーダーがたくさんいる。だからほんの数パーセントのリーダーが健全である限り、彼らの国は運営できるし、やっていける。
日本はこの、ほんの数パーセントのリーダーにならなければいけない連中が、駄目だね。これが決定的に違うところですよ、彼らの社会と。だから何をやっても相手にされない。
僕はそういう意味で言えば、日本の国民の意識改革と言ったけれども、じつは意識はかなりできているし、国民の心の中に生まれつつあると思っている。だからそれを本当に実行に移せるリーダーをきちんと育てなければいけない。政治家はもちろんだけれど、政治家という意味だけではなくてね。
そこをやりきれれば、一般国民の知的レベル、あるいはいろいろな意味でのレベル、潜在力というのは非常に高いのだから、その意味では日本を楽観視していますよ。しかし、そこができない時は日本は駄目だと断言せざるを得ない。