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第1章
18世紀とのアナロジー

第2章
「剛構造」がまねく業火

第3章
中国、ロシアという発火点

第4章
「人間の本性」に沿った世紀

第5章
日本のアイデンティティを見直す時

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中西輝政・福田和也(3/全5回) 2001.06.04

【第3章 中国、ロシアという発火点】
■ユーラシア勢力の破壊エネルギー
福田和也 それから前回「20世紀論」でアメリカの変質をご指摘になりましたが、いま拡張主義「アメリカニズム」の20世紀から、逆に元の19世紀までの個性的・土着的なアメリカに、アイデンティティをつくり直そうとする底流がある。

 しかしアメリカがもしはっきり「土着的アメリカ」に回帰しようとすると、多分今度はEUがもたないと思うのです。アメリカがあって初めてEUは団結がある。現在の欧州中央銀行の総裁が、日本であまり評価されていませんけれども、非常におもしろいことを言っていますね。

中西輝政 ああ、ドイセンベルクですね。

福田 欧州中銀の総裁であるにもかかわらず、「ユーロは貨幣として通用するのか」とか、「中東で一発でも弾を撃たれればユーロなどは終わりだ」というようなことを、総裁が自ら言っている。非常に自己破壊的なことを言っているわけですが、しかし、またなかなか筋が通っている議論です。そういうところを見ていくと、先生がおっしゃった「機能的な国家連合」というものに対しての、大きな警鐘だと思うのです。ドイセンベルクがどの程度の政治的射程があって、そう言っているのかちょっとわかりませんけれども、しかしEUがばらけていく可能性は常にある。

 さて、その一方で、中国、ロシアといった大陸国家が復活してきたときに、どういうモデルを彼らがつくり得るのか。中国があのままの規模で持つかどうかは、また別の問題としてありますが、それも含めいくつかのダイナミズムがあると思うのです。そのなかで、どのあたりが一番重要な発火点――というとちょっと刺激的すぎるかもしれませんが――になると思われますか。

中西 やはり、いまおっしゃった中国、ロシアでしょうね。ここがいまの枠組みを維持できないということになったときには、ものすごい破壊のエネルギーを持った、本当の意味での歴史的、世界史的変化ですよね。

 EUがどうなるかというのは、これは世界にあまり波及性はない。モデル性しかないですからね。第一次大戦で滅んだはずのヨーロッパ文明が、生命維持装置によってずっと70、80年ほど生き長らえてきたわけですが、これはひとえにアメリカという支えがあったからですね。アメリカがなければ、西ヨーロッパは全部ボルシェヴィズムになっていたはずです。ですから20世紀のヨーロッパにとってアメリカという存在が決定的なんですね。

 その意味でもう一つの発火点は、やはりアメリカでしょう。アメリカの変化は前回「20世紀論」で述べましたが、いま注目されるのは固有・土着的なアメリカというものの復活ですね。それから、おっしゃった中国、ロシアというユーラシア勢力。ここがビッグバンを起こしたり、あるいは一転して停滞の局面に入ってくる――これは世界大恐慌でも起これば、非常に考えられることです。

 それだけの大変化が起これば、20世紀のユーラシアに溜まっていたエネルギーが一挙に大振動を起こしかねません。

■エントロピーの低い世界
中西 しかし21世紀にはそれを立て直す活力源となるイデオロギーがない。膨脹的な傾向を唯一持っているいまの中国も大崩壊によって無くなってしまうということになると、その後はもはやエントロピーのものすごく低い世界になってしまうと思うのです。

 そうなった場合、物質文明は一定のレベルにあっても、歴史を切り開いていくエネルギーはみんな衰弱しているということになりますね。つまり18世紀ヨーロッパ的な停滞と腐敗が進行する世紀でしょうか。そのあとに、いよいよ始まってくるのがおっしゃられた世界帝国単位の、「21世紀型帝国秩序」というものへの再編成ではないでしょうか。

 その場合は、もしかすると中国とロシアというよりは、たとえばインドと中国とか、あるいは日本とアメリカとか、地理的な条件を越えてしまうような、なにか非常に奇妙な連合を構想しうる条件が十分出てくると思うのです。

 電子社会の発展もあって、物質的、地理的な枠組みを越えた世界秩序、地球の裏側の二国が互いに政治勢力として一体化していくということは、私は21世紀の半ばから後半にかけては可能性があると思っています。しかし、いま行われているそのような、電子世界秩序のガバナンス云々という議論には、まったく賛成できないのですね。その前に、一旦潰れなければならないし、潰れるためにはそれだけのエネルギーが要るわけですから、まだ相当の時間の幅があります。

 しかし、この大転換の試練というか、「業火」がどういうプロセスをとって起こるのか、その正確なシナリオまでは今はまだとてもわかりませんが。

福田 中世に、海洋ルートで結ばれた都市連盟というのがありましたね。ハンザ同盟とか、そういった形で地理的には非常に遠いんだけれども、利害が一致する国が海洋路ならぬインターネットなど電子技術を通して結ばれるというイメージですね。

 ただし、そこに至るまでに一度大きな崩壊が必要だというご指摘が、非常に重要だと思いますが。

(第3章 終)

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