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第1章
「破壊」とその後の「空虚」

第2章
植民地解放の真の意味

第3章
アメリカ文明とはなんだったか

第4章
戦争を失った世紀

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中西輝政・福田和也(1/全4回) 2001.05.22

【第4章 戦争を失った世紀】
■究極形態だったキューバ危機
福田和也 そしてもう一つ、20世紀を考える上で――もちろんこれも戦争と通じる問題ですが――科学技術と政治、あるいは軍事がこんなに結びついて、しかも全人類的に関わるようになってしまったということが挙げられると思います。その極点が核なり宇宙技術で、ある意味で大国間の戦争はなくなった時代でもありますね。

 大戦争の時代であると同時に、戦争はできなくなった時代。この「戦争」という、ある意味で歴史を一番大きく動かしてきたものが、この20世紀において一番大きくやってきて、そしてできなくなってしまった。この点についてはどうお考えになりますか。

中西輝政 先ほど植民地の独立というのは、実は何百年の世界史、千年単位の世界史の最重要な出来事だというお話が出ましたね。私は1960年代というのが、20世紀を論ずるときに最も重要な時代だと思うのです。"アフリカの風"と言われましたが、全大陸が50年代はほとんど植民地だったのに、70年代にはほとんど独立国家に変身しました。たった10年足らずです。

 それから、なんと言っても、この60年代の後半にかけて、いわゆる68年が「学生反乱」の年と言われますね。とくに先進国の若い世代が中心でしたが、このときに近代的大量生産による豊かな社会に対して、それがもはや人間の一生の目標たりえない、という点を明らかにしたもので、大きく言うとすでにこの時点で、21世紀の方向づけを非常に早く示していたわけです。

 そして、もう一つ60年代に起こった世界史的に重大な出来事は、62年のキューバ危機だったと思います。キューバ危機は、軍備を極限にまで拡張し最大限の破壊を敵の心臓部に対して与え、そして相手を物理的に完全なまでに破壊して決着をつけるという「近代戦争」の考え方が、限界に達したことを明らかにしました。国家間戦争の究極形態、これがキューバ危機だったと思います。

 しかしこれが結局できなかったということは、われわれの知っている近代総力戦の時代は終わったということでしょうね。
 その意味で西欧近代は明らかに60年代に終わったと思います。そのあとは、ですから別のゲームをやっていたのでしょうね。終わっていないかのように装って、ベルリンの壁崩壊あたりまで余韻を楽しんでいた……。

■500年単位の一つの終わり
中西 最近起きているのは「戦争」という言葉を便宜的に使っていますが、その実体は正反対ですね。「組織されない暴力」とでも言うべき戦争です。国家の力によって極限まで組織され行われる時代がキューバ危機で終わったら、かえって組織されない戦争という事態が世紀末に現れてきました。核戦争の危機の次は、今度は一番末端にエネルギーが蓄積されて極端に低次元の暴力が広く拡散される流れに反転した、といえるでしょう。

 これは60年代末からの国際テロやベトナムのゲリラ戦、北アイルランドなどですでに徴候は明らかでした。たとえばいまパレスチナで起こっているような戦争、あれはこれまでのどの中東戦争とも形態を異にしてますね。

 石を投げてゴム弾を撃つというようなことを、ずーっと続けていくんでしょうか。いつ始まったかもわからないし、誰がやっている戦争かもだんだんわからなくなっている。ですから和平のしようがありません。こういう組織されない暴力みたいな戦争が、21世紀はおそらく極限までどんどん進んでいくのでしょうね。

 この変化を見ていると、近代の制度化された戦争というものが20世紀に持った意味というのは、単に100年ではなくて、500 年ぐらいの単位で一つの終わりを画した世紀といえるかもしれませんね。

福田 ですから、20世紀は「戦争の世紀」とも言えるけれども、ある意味では戦争をわれわれは失ってしまったわけですね。

中西 そうですね、おっしゃるとおり、「戦争を失った世紀」でしょうね。ただ、今後科学技術がもう少し発達したら、新しい大国間戦争が考案されてくるでしょう。それは「人の死なない戦争」とかサイバー・ウォーみたいなものです。結局、戦争なしに人間は文明と生存を保ち得ない、これが人類存在の核心ですからね。

福田 ある意味で合理的な解決だった戦争すら、われわれは失くしてしまった。そういう世紀であるというように言えるのでしょうか。

中西 人間の死や国家の生命と決定的に結びついた文明現象としての戦争、ということで言えば、そう言えると思いますね。

(前編 全文終了)

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