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1 : 中西輝政
他人事でない堕落

2 : 宮崎哲弥
「熱い」選挙の果てしないツケ

3 : 福田和也
FIASCO<野心的な企みと滑稽な結果>

4 : 日下公人
大人になるか、子供のままか

5 : 片岡鉄哉
パックス・アメリカーナ、終焉の危機

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2000.11.20

危機に直面したときこそ、本質が浮かび上がる。
この予想外の出来事が意味する核心は何か?
今週は5人の論客の緊急寄稿を掲載していきます。

 アメリカ大統領選挙の開票をめぐる混乱は我々に、改めて多くのことを考えさせる。

 まず第一に、「民主主義の本家」を自認してきたアメリカ合衆国という国の、政治制度の根幹である選挙の開票・集計というものが、意外なほど杜撰なやり方で行われていたことがわかったが、その実態は、律儀で正確さを何よりも大切にする我々日本人にはショッキングでさえあった。

 この間に、まるで発展途上国や自由選挙を始めてやった旧社会主義圏の国で聞くような、たとえば「投票箱が盗まれた」とか「投票用紙の作成に意図的な不正があった」といった噂や風聞さえ、アメリカのメディアに飛び交った。

 アメリカに十年以上滞在したあるジャーナリストによれば、そんなことは毎度のことで何も珍しいことではないと言う。しかし、このニュースが世界中をかけ回ったことによって、アメリカが蒙った威信の低下は大きなものであろう。

 二つめに、この開票の杜撰さに驚いていたら、今度は両陣営が泥仕合にも似た露骨なメディア戦術や、自己に有利な再集計の要求や訴訟をくり返し、党派対立の深刻化を浮上させた。開票場の周囲に両陣営の支持者たちが集まって互いに気勢をあげ、ときには暴力沙汰もくり返された。

 とくにゴア陣営は、以前から当事者として、開票には小さな不正や杜撰な集計が当たり前の常識であるという実態を自ら熟知しながら、今回、権力闘争のためには、全米のあらゆる接戦区の再集計につながりかねない要求をあえてくり返し、訴訟を連発しているのは、将来の民主党のイメージに大きな汚点を残すことになろう。

 ブッシュ陣営も訴訟やメディア戦術を駆使するが、こちらは明らかに賢明な抑制を保っている。たとえば、北部のいくつかの州では、再集計を要求できるほどの僅差でゴア陣営が勝利したところがあるのだが、共和党側はあえて再集計は求めず、早期に決着することがアメリカの国益だ、という立場を打ち出している。

 実際、このまま泥試合が続けばアメリカは憲法上の危機にも突入しかねず、国家的立場を優先させる共和党に徐々に世論の支持は集まってゆくことになろう。

 上述の滞米取材経験の長いジャーナリストによれば、今回同様の大接戦だった40年前のケネディ対ニクソンの大統領選においても、実は疑わしい選挙区が数多くあったが、ニクソン陣営は敢えて問題にせず、敗北を率直に受け入れたということである。

 それは何よりも、米ソ冷戦の緊張下にあった当時のアメリカ人は、今日のアメリカ人と比べ、国家意識と政治におけるエートス(倫理的・精神的バックボーン)がはるかに高いものがあったということであろう。
 冷戦の終焉はあらゆるところに弛緩と堕落を広げているが、アメリカの例は他山の石としなければならない面がある。

 というのも、わが永田町でも、自民党の加藤紘一氏の動きをめぐる政争は、マスコミの「支持率」によって誘導されている嫌いがあり、森政権の功罪に関係なく、もしマスコミでの「支持率」が下がったことだけで内閣退陣ということが定着すれば、ポピュリズムによる日本政治のより深刻な堕落と崩壊につながるのではないかと恐れるのである。

 日本の現状は、アメリカ以上に弛緩と堕落が進んでいるのかもしれない。

(終)

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