【Part2 未来が予測しがたい国、中国】
では、今後の中国がどうなっていくかという問題がある。
それが分かれば対策を立てやすいのだが、そこにもまた中国という存在の複雑さがある。中国とは、外部が平和的な環境をつくればそれに対応して柔軟になるという構造を持つ国ではないからだ。歴史的・伝統的に中華思想があり、自己中心的な体質を持っている。それに加えて先ほど述べた共産党としての戦略がある。
その上に「21世紀は中国の世紀だ」と、これまでは虐げられたがいよいよ自分たちが主人公になるのだというものすごい意気込みがある。北京オリンピックが決まり、国民の意気も上がっている。したがって、周辺諸国にとっては注意しなければならない、非常に「危険」な存在である。
軍事力といった目に見える問題だけではない。13億人という膨大な人口は、たとえわずか10%でも1億を越えてしまう。それがどうアジアに散っていくかという問題もある。もし難民化したり、犯罪の輸出となればさまざまな問題を生むことになるから、どこかでそれを食い止める措置を取っておかなければいけない。
それらを考えると、私は、中国は経済が発展すればそれに伴って民主化するというようには、必ずしもいかない気がするのである。いつか共産党の独裁体制は崩れるとはいえ、わかりやすい未来シナリオを描くことが困難な存在であるだけに、中国の今後の方向性を全部包括するような安全保障の措置を取っておくことが、日本にとってきわめて重要だろう。
望ましいシナリオとしては、21世紀において中国がうまく発展してくれれば、1つの安定的な要素になる。しかし今のところ、そういう気配はない。たしかにAPECやWTOといった世界のグローバリズムに協調しようとしているが、その反面、全く対立するような軍事力の増強に加え、旧ソ連や北朝鮮と組んでいこうとする姿を見ると、果たして従来とどこが変わっていると言えるだろうか。
経済的には、例えばこの数年間だけでも上海はものすごく変貌している。ビルは建ち街もきれいになり、イルミネーションがあちこちで輝くようになった。しかし、その表面的変化にもかかわらず、例えば学問の自由や表現の自由というものは全くない。台湾に親近感を持つような言論は一切できないし、法輪功も宗教的な弾圧を受けている。少数民族が独立しようとする意見が少しでも出たら、徹底的に抑えつける。非常に一元的な言論統制もしたままである。インターネットも決して自由には使えない。外国との電話もいろいろな制約がある。そういう「もう1つの中国」があり、そのような中国の「2つの顔」に対して十分対応することを忘れてはならない。