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Part1
司法の役割とは

Part2
2割司法になる理由

Part3
なぜ裁判員制度が重要か

Part4
国民の自覚をもとにした改革を

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中坊公平 弁護士・元日弁連会長  (page1/4)
2001.11.28

300kbps ブロードバンド映像、公開中
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【Part1 司法の役割とは】
 司法とは何かを考えるにあたって、二つほど視点がある。まず第一に民主社会における司法の役割であり、第二にいわゆる三権分立と言われているが、立法、行政、司法と、国家の権力を三つに分けた中での司法の役割である。
『司法制度改革審議会意見書』(平成13年6月12日、司法制度改革審議会)を出すにあたって、その二つの理念をどう考えたかという点を最初に説明したいと思う。

 まず民主社会における司法の役割ということだが、民主社会とは多数決によってものが決まることが大原則となっている。ところが多数決が常に正しい結果となるかどうかという基本問題がある。むしろ歴史的に見ると、社会は熱狂と暴走の繰り返しをしてしまいがちで、民主社会における多数決論理にはそのような一つの大きな落とし穴がある。

 現に民主社会の幕開けと言われていた、1789年のフランス革命は暴走と熱狂を繰り返した挙句、結局ナポレオン独裁に終わってしまった。あるいはワイマール憲法という世界でも確たる憲法をつくりあげたドイツで、ナチスヒットラーが生まれてきた。このときも多数決によって、ヒットラーが選ばれたのであった。

 このように、民主社会において多数決で決めたことが常によい結果となるか、幸せな結果となるかということ自体に、留意すべき大きな問題点がある。仮に少数者の意見であっても、それが実際には道理を持っていたとすれば、誰かが「今回の多数決は熱狂の赴くまま暴走している」と言わなければならない。裁判官が暴走と熱狂から少し離れた静かなところで、道理にしたがった判断を示すことによって、国家全体の行方を安全ならしめる。あるべき方向というものを示す。これが民主社会において司法が果たさなければいけない一つの大きな役割であり、立法にも行政にも出来ないことである。

 それから第二に、社会というものは今のところ法の支配によって動かされている。では、そもそも法がどうして生まれたかといえば、ルールを決めることによって社会を合理的に安定して動かしていくためである。
 それを人間の身体に喩えていえば、法をつくりだす国会は心臓である。その国会議員を国民が選ぶ。そうすることによって、まず心臓によって血液が人間の身体に出ていくことになる。

 次に行政は、人間の身体にたとえるならば、心臓からのびる動脈である。すなわち心臓(国会)でできた法を執行するということは、血液を人体の各部、末端であれ臓器であれ皮膚であれ、ありとあらゆるところへ運んでいくことである。その動脈が行政である。

 さて次に、動脈から血が送られてくると、苦情や紛争が生じてくる。それを末端から心臓に戻さないといけない。その静脈が、司法なのである。最近の例でいえば、ハンセン病は法の執行にいろいろな意味で間違いがあった。そのときもう一度心臓に戻して、法律が悪ければそれを治さなければならない。その静脈の役割を果たすものこそ司法である。

 ところが、私の造語でいえば「2割司法」。すなわち本来果たすべき機能の2割しか、日本の司法は果たしていない。先ほどの喩えを使えば、心臓と動脈だけはあるが、静脈の働きが極めて弱いために、一種の循環不全をきたしてしまっているのである。さらには、民主社会の多数決の落とし穴ということから言えば、先に述べたような暴走を起こして、社会が逆に自分で自分を殺してしまう恐れがある。

(Part2 へ続く)

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