危機に直面したときこそ、本質が浮かび上がる。
この予想外の出来事が意味する核心は何か?
今週は5人の論客の緊急寄稿を掲載しています。
アメリカはこれをきっかけに、大人になることだろう。
コロンブス以来500年、建国以来約225年、南北戦争以来140年、その途中アメリカはベトナム戦争まで外国で負けたことが無く、内部でも大きな問題が無い国であった。
だから「子ども」だったと思う。しかし実力だけはあるから、世界にとっては好きでもあるし、迷惑でもある図体の大きな利かん坊という存在だった。
しかし、負けたことの無いアメリカが、夢にも負けると思わなかったベトナムで敗北した。それで、世の中には通らないことがあるとわかった。
その経験からずいぶん大人になって、そのあと10年間は反省期。自信を失っていた。そのあと80年代は日本経済にも遅れをとり、しかし90年代にそれを巻き返したので、最近のアメリカは自信回復を通り越し、自信過剰であった。
その矢先に、今度は国内でこのような大統領選を巡るゴタゴタである。大統領が決まらないとは、さすがに異例の事態。
本稿を執筆しているのは17日で、掲載されるときには予定であれば新大統領が決まっている。(編集部注・結局正式な決定は延期となった)。ちょうど渡印の飛行機の中でそのときを迎えるが、新大統領のプロフィールは他の方が紹介してくれるだろうから、編集部から依頼された別の視点について述べておこう。
今回の開票をめぐるゴタゴタが、後に後遺症として残るかどうかだが、そういうことにはけじめをつけてきた国がアメリカである。ブッシュが勝ってもゴアが勝っても、敗者はけじめをつけ、大統領選挙の正当性に傷が残らないように収斂されていくのではないか。
ゴルフで言えばサドンデス。同じスコアで残った人は、あと1ホールだけで決着をつける。その1ホールで勝つか否かは、実は運も大きく絡んでいる。だからといって、その方式で本当に実力が測れるかは問わない。どちらかが先に1ホールを制すれば、それが勝利者だと明確に決まる。実力が伯仲なら、あとは運の世界。
コインを投げるのと同じだと、承知でやっている。極端に言えばジャンケンで決めてもいい。それは手段の問題。しかし結果は結果として尊重する。
そういうことは、アメリカはわりと慣れた国である。決まったものは決まったもの、決まりは決まり、ということになると思う。
もっとも今後のために、開票の仕方をどうすべきとか、選挙人制度をやめようとか、制度面ではもめるだろう。しかし折りよくIT革命なのだから、それを利用してもいい。
今回の選挙で多くの人がアッと驚いたのは、あまりにローテクな方法だった。約3割の有権者が、穴をパンチする投票用紙を使っている。インターネット先進国ではなかったのか?
ちょうどいい国内改革になるだろう。
建国以来約225年たって、ちょうど手当てが必要な時である。
アメリカは自浄力のある国である。もっとも、行き過ぎもしょっちゅうだが……。
これをいい機会として、大人になってくれるのではないか。
しかしもちろん、勝利者が決まってもゴタゴタを引きずるようならば、上記で述べたのと正反対のことになる。
すなわち「大人になれないアメリカ」「大人になる機会を自ら潰したアメリカ」「力はますます強くなったが、子どもじみたアメリカ」が現れることになる。
これまでの過去を見ると、アメリカは自浄能力を発揮すると私は期待するが。
「大人のアメリカ」か「子どもじみたアメリカ」か。結果がそれほど大きく分かれるという意味では、「後始末」に要注目である。