【第5回 憲法改正なくして国際活動はできない】
○福田和也 最後にお伺いしたいのは外交関係です。一番記憶に残るのは、自衛隊のPKO派遣のとき「派遣するべきではない」とおっしゃった。しかし、日本の国際的な存在感なり、影響力がどんどん低下していくなかで、日本がある程度の影響力を保持しつつ、国際社会に貢献していくにはどうすればいいのか。あるいはそういうものは要らないのか。そのへんをお聞かせ願いますでしょうか。
●小泉純一郎 新聞には報じられませんでしたが、今年の沖縄サミットで、クリントン大統領が沖縄でこういう挨拶をしたのです。“There
is Peace Here, Because the Military is Here.” (「ここに平和がある。なぜなら軍隊があるから」)
この考えは、世界の常識ですよ。ところが、日本国民は違うんだな。日本国民にとって、軍隊があるから平和があるという話は、受け入れられない議論でしょう。
旧社会党系を中心とした非武装中立論者は、日米安保のときから、「安保条約があるから戦争に巻き込まれる、基地があるから戦争に巻き込まれる、軍隊があるから戦争になる」という考え方でした。そういう考えを持っている国民が多い日本と、軍隊があるから平和があるという、クリントン大統領の演説には覆いきれない溝がある。
そういうなかで、いま日本が国連常任理事国入りを望んでいます。あのP5といわれる五大国のアメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国は、すべて国際紛争を解決するために武力の行使、あるいは武力的威嚇はやむをえないとする国です。あるいは当然だという考えです。そこへ日本が手を上げている。
しかし、日本は自衛隊すら軍隊と認めちゃいかんという議論がある国ですよ。国際紛争を解決する手段として武力の行使、武力による威嚇は永遠に放棄すると言っている。そんな国が常任理事国として、やっていけるのかということです。
憲法を改正しないで、常任理事国といっしょに国際活動ができるフリをするのはやめろ、と、それが私の議論です。だったら憲法改正しないさいと。
いまの憲法を制定したのは、敗戦後の無に帰したときであり、状況、経済力、日本に対する期待、日本の持っている力が全然今日と違います。経済成長を経て、世界からも日本に対する期待がずっと大きくなった。
そういう時に、憲法だけは当時そのままにして常任理事国と同じ事をしようとするのは、とうてい無理なことですよ。結局、憲法なんかどうでもよくなってしまうことでしょう。
だから、憲法をあやふやにした誤魔化した行動はやめろ、と、私はそこから議論すべきだと思う。だからPKOは派遣すべきではない、無理だと発言したんです。そういう点でもっと国民も憲法というものを考えるべきじゃないでしょうか。
憲法解釈論議の中で「そんなことはできない」という話になれば、憲法改正したほうがいい。私はむしろ憲法改正論者ですからね。その際には九条も変えるべきだと。九条を変えないで、なんでもできるといったら、これは小学生、中学生が憲法を読んで、おかしいぞと思っちゃう。そんなに曖昧にしちゃいかんというのが私の議論なんです。