【第4回 首相公選制でリーダーシップ回復を】
○福田和也 リーダーシップの問題を語るときに、たとえば浜口雄幸のときは、あれだけの不況にもかかわらず、デフレを掲げて、しかも国民を説得して、普通選挙で勝っているわけです。
●小泉純一郎 そう、勝っているんですよ。
○福田 結局大恐慌があったので、失敗となってしまいましたけれども、しかしこれは政治家も立派だし、国民も立派です。だから、そういう先を見据えた精神に立ち戻るという機運を、どうつくっていくのか。これは国民の側も問題があると思うし、政治の制度なり枠組みの問題もあると思うのです。
●小泉 政治主導と言いながら、政治が役人を導く大方針を出せていません。僕は役人を叱ってばかりいたって仕方がないと言うんです。政治が役人を排除したり無視したのでは何もできない。そうではなく、役人を従えるだけの、大方針や大戦略がないのです。このほうが問題ですよ。
しかも、いまの議院内閣制だと、大臣がころころ変わるでしょう。指導しようとしたって、ようやく役人の幹部クラスの名前を覚えたり、役所の仕事を覚えたときにはまた交代です。これじゃ指導力を発揮しようと思っても発揮できない。
平成になってから、森総理で10人目の総理です。大臣 1年どころか、総理だってくるくる代わる時代ですよ。少なくとも 3年か4年ぐらい総理をやって、大臣も代わらないという制度をつくらないと、将来を見据えた必要な政策を打ち出せない。国民に1年ぐらいは苦しいところを我慢してもらいながらも、一つの目標を持って引っ張っていく政権をつくらなければ、ほんとうの政治はできません。
これだけ交代が多いと、目前の支持率だけを気にし、足下の対処に終始してしまう。3年か4年政権を担当すると決まっていれば、長期的な、中期的な視野のもとに政策が打ち出せるでしょう。指導力も違ってくる。また、役人も変わるでしょう。大臣が1年で代わるんじゃないかと思えば、政治家の言うことだって聞かないし、「ああ、1年たてば気に食わない大臣は去ってくれる」と思うだけです。
○福田 小泉先生はずっと首相公選制を唱えてらっしゃる。また、衆議院、参議院の両方を廃止して一院制にすべきとも提言されています。そのことについてお聞かせください。
●小泉 いま言った中・長期的な視野をもつには、首相公選制にして 4年ぐらいの任期を与える。そして、あまり長くするといけないから、アメリカみたいに三選禁止規定を設ける。大臣も、国会議員ではなくても、民間から起用できるようにする。
また、認められた議員も大臣になれる。大臣になったら現職の国会議員をやめる。そして、衆議院、参議院も一度両方廃止して、新国民議会で、一院制でやるようにするんです。そうすれば国民も政治参加の意識を持つだろうし、衆議院と参議院が同じようなことをやっている現状も変わってくるのではないか。
○福田 たしかに衆議院議員と参議院議員で、党派の配分がちがうと、国民は選んだ実感が薄いですね。
●小泉 いま衆議院も参議院も同じになっちゃったから。一院と二院が同じだったら、意味がない。県議会も市議会も一院制でやっているのを見ると、国会も衆議院、参議院二院制よりも、両方一度廃止して、新国民議会みたいなものをつくった方がいい。
そして首相を公選にする。首相の候補者は国会議員何人かの推薦を資格にすればいい。5人でも10人でもね。そうすると、泡沫候補は出ない。アメリカみたいに1
年間やる必要はないけれど、半年か3カ月の長期間、候補者をじっくり選ぶことができるようにするんです。候補者の抱負を聞きながら首相を選んだほうが、国民も政治に参加しやすいですよ。選ばれた首相も、戦略をもった政策が実施できる。
天皇制と矛盾するという人がいるけれど、国民が選んだその新首相を天皇陛下が認証すればいいんです。国会議員が選んだ首相を天皇陛下が認証する今の制度と同じです。全然天皇制と矛盾しない。
しかし、そうであればなおさら、首相公選によってある程度中期的な戦略を持った候補を選んだ方がいい。国民に抱負を述べるような候補を選ぶ。そして大臣をくるくる変えない。4年間ぐらい、国民からそれなりの信頼のある人を大臣にする。国会議員が大臣になってもいいけれども、国会議員以外からも、選ばれた首相が自由に抜擢できた方がいい。
そういう制度のほうが、私は政治にずっと指導力が出てくるんじゃないかなと思いますよ。