【第2回 金食い虫の機構制度をぶち壊せ】
○福田和也 財政構造改革に怯んでしまう実情を聞くと、政治家も官僚もパトスが非常に薄まってきた気がします。国民も含めて先のことを考えていない。足下の景気対策よりも、まず財政再建ありき、と。それがないと景気回復もできない。
●小泉純一郎 財政再建は増税すればできるんです。しかし、増税で財政再建をしたら意味がない。既得権益を死守しようとする人たちの制度を温存してしまうだけです。問題は金食い虫の行政機構、財政構造、金属疲労と言うべき50年間積み上げてきた諸々の機構制度をどうやってぶち壊すか。
そのことを考えなければなりません。いわゆる構造改革です。
私は徹底的な民営化を図るべきだと思う。民間でやっている仕事を役所がする必要はない。だから、まずは郵政民営化だと言っているのです。郵便局の経営は民間人に任せたほうが、はるかにいろんな事業が展開できて、しかも税金も納めてくれる。それに郵政三事業の民営化は、財政投融資制度とか、全部の特殊法人に及んでくる問題です。
しかし、これがなかなか選挙の票とからんでうまくいかない。約30万人の職員が選挙で自民党、民主党両方応援するものだから、なかなか動けない。
私はいずれ消費税引き上げのときに、みんな真剣に行財政改革を議論してくれるんじゃないかと思う。
○福田 消費税の問題が改革の必要を迫る、というわけですが、そのあたりについてお聞かせ下さい。
●小泉 最近チラホラと出ている消費税引き上げ論というのは、今までの3%導入、5%への引き上げとは、質が違うんです。平成元年に消費税3%を導入した時は、所得税の減税財源だった。当時サラリーマンの所得税率は累進税です。給料が上がると税率が上がるから、重税感が強い。なんとか所得税を減税しよう、と。これはみんな大賛成で、やろう、やろうとなった。
ところが、当時の考え方は今よりもっと責任感があった。減税するためには財源がないとダメだというわけです。財源探しに苦労したんです。そこで物品税を廃止して、薄く、広く、3%の消費税を導入した。その3%の増税分と所得税の減税分を同時同額にして、平成元年の4月から消費税を導入し、4月から所得税の減税を実施した。
まあ、減税するんだからいいんだろうと思ったところが、消費税の方は国民から大反発食らったわけです。で、自民党は参議院選挙で惨敗する。
ところが、しばらくして、また日本の所得税は高いと言われ、もう一段、所得税の税率を下げようということになった。そして、消費税を3%から5%に引き上げようとなった。村山さんが総理だった時です。
しかし、同時同額で3%では反発を食らったから、理解を得るためには今度は所得税減税を2年先行させる。その後に 消費税5%引き上げるとした。かつて大反対した社会党の人たちが賛成してくれるんだから、ということで、そんなに反発もなく5%に引き上げることができたわけです。
いずれも、所得税の減税財源が消費税でした。しかし、いま出ている消費税引き上げ論はこれと違って、「財源の税収がないから、引き上げる」という議論ですよ。
国民は5%程度の消費税は、まぁまぁ仕方ないと思っているけれど、二桁になると大変ですよ。しかも、今度は財源がないから。
税金を使うほうの制度、機構を直していかないと、いくら増税したって、穴の開いたバケツに水を入れるようなもので、どんどん逃げていってしまう。国民に行き渡らない。
いい例が、今の民間でやっている宅配便です。民間が参入してから、いまや民間の扱う仕事量は8割。しかも、郵政省よりサービスについても価格においても、あらゆる面で上回るサービスを展開している。そして、民間だから税金まで納めてくれる。
しかも、郵便貯金のお金と簡易保険のお金を、財政投融資で特殊法人に使っているわけでしょう。得体の知れない特殊法人も多く、不良債権までいっぱいある。これは増税で全部穴埋めするという前提だから、郵便貯金の金も簡保の金もこのように使えるんです。
景気停滞のときに一番有効な政策は金融政策と財政政策でしょう。現在も政府は、やるべきことは結構やっているんですよ。金融政策を考えてみてください。史上始まって以来、こんなに金利が低いときはないですよ。公定歩合
0.5%。これ以上、下げようがないほど金融緩和、低金利政策をとっている。しかし、国民の水準までお金が行き渡らない。