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第1回
借金財政で経済再生はありえない

第2回
金食い虫の機構制度をぶち壊せ

第3回
明日を考え、今を我慢する精神

第4回
首相公権制でリーダーシップの回復を

第5回
憲法改正なくして国際活動はできない


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(page 1/5) 2000.12.04

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政治が揺れるとき、常に注目される政治家・小泉純一郎氏。
一見過激に見えるその言動の背後にある、政治哲学と長期的展望は何か。
そして日本が進むべき道をどう考えればいいのか。
その核心を福田和也(本誌特別編集委員)が問う!

【第1回 借金財政で経済再生はありえない】
福田和也 今回は政局の話は措いて、少し長い視野のお話をうかがいたいと思います。まずは、小泉先生がかねてより提起されている問題の一つに財政赤字があります。

小泉純一郎 5年前、武村大蔵大臣のときに、大蔵省は財政危機宣言を発したのです。国債の増発に深刻な危機感があり、4年前の衆議院総選挙では、ほとんどの政党が行財政改革を公約に掲げて戦いました。

 ところが、選挙が終わって、行政機構の改革、財政構造の改革に手をつけようとすると、既得権を死守しようとする人たちの抵抗にあい、怯(ひる)んでしまった。以来、国債は増発に増発を重ね、今年(2000年)すでに借金は370兆円を超えています。5年前の危機宣言、4年前の衆議院の総選挙の公約と、全く逆のことをやっているんです。

 この矛盾に反省すらない。 日本の深刻な経済危機と財政危機に対処しようという意欲はどうなったのか。
 抵抗に怯み、改革の意欲がなくなったというところに、今の不況、政治の停滞の最大の原因があると私は思っています。

福田 もう一度金融危機が再燃すると見ている海外のエコノミストもいるのに、景況感がよくなっているとさえ言っていますね。

小泉 財政危機宣言を発した時のあの深刻さを、忘れているのではないでしょうか。確かにかつては国債発行の効果はあった。昭和48年、狂乱物価という言葉も出たほど日本は深刻な問題に直面した。イスラエルとアラブの第四次中東戦争が勃発し、石油の値段が一挙に4倍5倍になったんです。その時、不況をどう打開するかということになり、国債を大量発行したのです。それが予想以上の効果を上げましたね。

福田 福田赳夫さんでしたね、おやりになったのは。

小泉 そうです。当時は、不況に対して予算をカットしない、仕事を減らさない、増税もせずに国債発行の借金でしのいだ。それは財政が健全だったから、借金が全部新規の政策事業に使えたんですよ。景気が回復したときに、借金は返していればよかった。

 ところが、景気が上向くと、当然、大蔵省が見積もった税収よりも多い「自然増収」がでてくる。税の取りすぎだという議論が起こった。借金返済よりも、国民に還元するために減税に回そう、公共事業に回そうということになった。特に選挙が近づくと、減税とか公共事業に使った方が、国民は喜ぶ、と。

 そうすれば、もっと景気はよくなって、もっと税収が上がってくるだろうという考えですね。そして、衆議院選挙が終わってから、借金を返して健全財政にすればいいと政治家は思うわけです。

 しかし、衆議院が終わると、またすぐ参議院選挙。今年の選挙がいい例でしょう。今年6月に衆議院選挙があった。衆議院選挙が終わったから、本格的にこれから財政構造改革に取り組むかと思ったら、来年すぐ参議院選挙です。だから、またバラマキ予算的なことをやらざるをえない。この繰り返しですね。

 昭和40年に初めて国債発行をして、100 兆円超えるのに18年かかったんです。そして、もうそろそろ返さなきゃいかんなというときに、また不況が来たり、選挙が近くなる。増税はできない。かといって歳出も削減できない。また国債発行です。

 200 兆円超えるのに11年しかかからなかったけれども、気がついてみたら、300 兆円を超えるかもしれないというところで、5年前、財政危機宣言を発したんです。もう子や孫の世代、若い世代にツケを回しちゃいかんというわけです。

 しかし、今年すでに国債発行だけで 370兆円超えてます。まさに借金は麻薬。雪だるまのように増えているんですよ。

福田 この期に及んで、もっと借金せよというのが今の政府のやり方ですね。
 
小泉 それでほんとに景気が回復するのか? 経済が新生・再生するのか? 私はありえないと思ってます。この「今さえよければいい」という姿勢というのは、必ずしっぺ返しが来ますよ。

・・・すでに現在の納税者が借金苦・・・

小泉 今年の予算は一般会計約85兆円です。そのうち、税収は50兆円に満たない。にもかかわらず、30兆円以上もの国債を発行し、借金している。

 今までの国債発行は孫子の代にツケを残しているわけです。ところが、あまり皆さん気づいていないのですが、今は後世へのツケだけとは違うのです。もう国債だけで 400兆円近くになり、地方債も含めると、 600兆円を超えるでしょう。
 現在の納税者が今までの借金に苦しんでいるんです。

 というのは、30兆円今年の予算で国債発行するけれども、20兆円はなんの新規政策事業にも使えないのです。今までの借金増発のお蔭で。20兆円というお金は大変ですよ。サラリーマンの所得税を全部集めたって、15兆円そこそこなのですから。これではサラリーマンは何のために税金を納めているのか。今までの借金の返済とか国債費で消えてしまう。借金を返すのに借金をしてるんです。これでなおかつ借金すれば景気がよくなると考えられますか?

 この20兆円のお金がいま新規の政策事業に使えるとしたら、どんなに楽か。財政が健全だったらできたんですよ。10兆円減税、そして10兆円を新しい事業に使う。どれだけたくさんのことができたと思いますか。それがなんの新規の政策事業にも使われないで、国債に消えてしまう。

 私は国債をゼロにしろとは言わない。私が言っているのは、そんなにきついことではないんです。せめて、来年度からは30兆円以下にしろと言うんです。今年度以下に国債発行を抑える。そして、増税せずにその枠内で予算編成をすべきです。

 そうすると、何を削って、何に予算を当てるか、おのずと優先順位もはっきりする。ムダな事業も自然になくなりますよ。

(第2回へ続く)

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