i-mediatv.co.jp banner justice
banner
banner
banner
banner
justice_top


Part1
行政改革、三重県の事例

Part2
「利害調整型」政治・行政からの脱却を


 Profile

title
portrait
北川正恭 三重県知事     (page 1/2)
2001.09.17

【Part1 行政改革、三重県の事例】
 最近、国において諸制度の改革への取組が急速に進んでいる。4月の小泉内閣の成立以後、それが一層加速された感がある。特殊法人・公益法人の改革、公務員制度の改革などに加え、経済財政諮問会議、地方分権推進委員会の答申により、地方交付税や道路特定財源を見直すなどの地方自治のあり方に大きく関わる諸制度の改革が打ち出されてきている。

 私は、これからの地方自治は、(1)地方分権、(2)情報公開、(3)政策評価などの仕組みを自らが作りだし、主役である住民と協働して新しい価値を創造していくことが中心のテーマではないかと思っている。目指す姿は、徹底した情報公開と政策評価を進めることにより、住民満足度を高め、住民が主体的に参画し、自らの地域を作り上げていく民主主義の実現である。
 それに目を向けて真剣に考えている自治体と、それに背を向けて何もしない自治体とでは、今後の10年を待たずに、大きな差が一気に顕在化すると思う。

 三重県庁は、サービス機関である。主権者は大切な顧客と思っている。私は、1995年に知事に就任して以来、生活者起点の行政を掲げ、日本の自治体の先頭を切って改革を続けてきた。独自の行政改革の取組として、まず「職員の意識改革」から始め、「さ=サービス、わ=わかりやすさ、や=やる気、か=改革」の頭文字を取った「さわやか運動」を展開した。その後、「分権・自立」、「公開・参画」、「簡素・効率」という三つのキーワードのもと、21項目の具体的方策を示した「行政システム改革」として拡充し、今日に至っている。

地方分権
 国の地方に関する制度改革として、私が重要と考えていることに、昨年の4月に施行された地方分権一括法がある。これまでは、県には、国の出先機関として位置づけられた機関委任事務が約8割もあったことはご承知のとおりである。これは、ある意味で、為政者は選挙において嘘を言ってきたことになっているのではないか。選挙の公約で「県民のために全力を挙げて頑張る」などと言ってきたのだが、これまでは国の言うことを聞かざるを得ないことが多く、制度的に無理があった。

 しかし、地方分権一括法により、機関委任事務が原則廃止となり、十分ではないものの、ようやくわれわれは、地域で求められている課題に向き合い、県民と議論し、地方独自の取組ができるようになった。三重県が全国に先駆けた自主条例である「産業廃棄物税条例」* がこの始まりと思っている。この条例は現在、国の同意を求めて、総務省と協議中であり、国と対等の立場で県の主張を行っている。

* 産業廃棄物税条例
 資源循環型社会の構築を目指し、環境先進県づくりを推進するため、産業廃棄物税を創設し、その財源をもって産業廃棄物の発生抑制、リサイクルの推進及び適正処理に係る環境対策に関する経費に充てる。その効果として産業廃棄物の発生抑制、リサイクル等の誘因となることが期待できる。産業廃棄物の三重県内の中間処理施設及び最終処分場への搬入に課税し、税率は、1トンあたり千円、年間千トン未満は免税となる。なお、国の同意が得られれば14年4月から施行の予定である。

情報公開
 次に、情報公開である。三重県は、1988年にすでに情報公開条例が施行されており、2000年にはさらに先進的な内容に改正しているが、国においても本年4月に情報公開法により情報公開制度が導入された。国の府省はこれにより徹底的に変わり始めるだろうし、国家公務員の方々の仕事のしぶりも国民への説明責任を念頭に置いた緊張感のあるものに決定的に変わっていくことになる。

 歴史のある大企業においても不祥事が生じているが、その原因は不透明な組織であったことが大きい。情報非開示で批判も受けてこなかった結果、その企業の存続すら危うくしている状況は、皆様ご存じのとおりである。自治体も従来のパラダイムのままでいると、同じようなことが起こるのであり、本当に変わらないと危険であるということを、十分に認識しなければならない。これらの不祥事の発端の多くが内部告発によるものであったことを思い出すべきである。

 1996年に三重県で生じた不適正支出問題も、内部告発が一つの契機となっている。これは、われわれ自身が透明な組織を作らずに、プロセスを不透明にしてきたために起こったことである。国における外交機密費などの問題も、解決の方向を真摯に考えて取り組まないと組織の存在が問われることになると思う。国は、国民に対して真に透明な組織体となることから始めなければならない。自治体も同様。より早くそれを実現できるか否か。これからの10年で、その差が一気にはっきりするだろう。内部告発と外部評価に耐えられない組織は存続し得ないと悟るべきである。

 これまでは、国、県、市町村、国民がお互いに責任転嫁してきたといえる。要求型、観客民主主義の結果が666兆円にのぼる借金である。そこでは責任の所在が不明であり、納税者にとっても、税金がどこへいったのかわからないという不信感がある。今後の地方自治には、地方分権により、税財源や権限を地方に移して、受益と負担の関係を住民に見えやすくすることが求められているのである。これが情報公開の最もよい現れ方であり、情報公開そのものであるともいえるのではないか。そうなると、行政の組織がプロセスまで透明なものに進化しなければならないのは当然である。

政策評価
 評価に関しては、先の通常国会で「行政機関が行う政策の評価に関する法律」、いわゆる政策評価法が成立した。三重県では行政改革運動の中心となる取組として1996年から「事務事業評価システム」を導入してきた。これは、県の全事務事業を事業の目的から見直し、数値目標を掲げ、成果があったかどうかを評価し、県民に説明責任を果たすことをねらいとしている。全国に先駆けて行政に「評価」という観点を取り入れたことで注目を集め、今回の国の「政策評価法」の成立に影響を与えるとともに、各地の自治体において様々な形で採用されてきており、行政改革運動のメインツールの地位を得ることとなった。三重県へ全国の自治体や、最近では国の府省の方々も多数調査に来ていただいている。

 しかし、単に「評価」の仕組みを導入しても、それだけで行政が変わるものではない。国の府省の中には評価専門の外郭団体を設立した熱心なところもあると聞いている。また、これからは評価を営業に掲げるコンサルタントが繁盛するのか、といった発言も聞いたこともある。しかし、何のために導入するのかという理念を明示し、行政改革の中の運動論として全組織に展開できなければ「評価システム」は、成功しないであろう。トップのリーダーシップと職員の意識改革が問われると思っている。三重県では、この評価システムをさらに進化させ、「政策推進システム」** と名付けた評価をコアとし、徹底した情報公開を基礎とする行政の新しい仕組みづくりに取り組んでいる。

** 政策推進システム
 三重県のビジョンを提示した『三重のくにづくり宣言』を中心とした県政を推進し、第二次実施計画に定める施策や基本事業を的確にマネジメントするためのシステムである。『三重のくにづくり宣言』の数値目標を見直し、事務事業評価システムの機能向上を図ることと合わせ、予算編成手法や組織構造を改革することで、三重県庁の活動が評価、行政経営資源配分、事業実施のすべてにわたって『三重のくにづくり宣言』の政策体系に沿って行われることとなる。

(Part2へ続く)


page_jump
justice i-mediatv.co.jp