【第2回 GEの驚異的な持続と業績】
■キーワードは「淘汰」
さて、このような10年間の波乱に満ちたe産業の歴史をどのように解釈すべきであろうか。「やっぱり若造のベンチャーでは」と切り捨てたくなる見方と、「それでもいつかはベンチャーが」と徹底支持する見方に分かれるのかもしれないが、この場合、最も重要なキーワードは「淘汰」である。
どのような産業も、一見非効率で無謀な実験を通して、新たなビジネスの仮説が検証されることにより、初めて継続的な生を受ける。その淘汰の過程を振り返れば、いつもプレーヤーたちは幼く、しかも淘汰には多くの犠牲を伴っている。
しかし、こうした一見無駄と見えるプロセスこそが、新たな産業を生むためには常に必要であることも事実である。J.A.シュンペーターの言葉を借りれば「創造」は常に「破壊」から始まる。「破壊」と「淘汰」という過程なしに、新たな産業の主役を生み出すことはできない。
1996年から始まったeカンパニーによる秩序の破壊。そして、2000年後半に起きたクラッシュによる熾烈な淘汰。この「破壊」と「淘汰」の過程のなかで、ドットコム・カンパニーのすべてが凋落したわけではないという事実に、私たちはもっともっと注目すべきであろう。アマゾンは業績を回復しているし、イーベイも依然として好調である。
支持されなかった仮説(例えば、将来に飛躍の可能性があるうちは赤字を垂れ流ししても構わない)や、またその仮説の周りで有頂天になっていた者たちを笑うのは、やさしい。
しかし、真剣に明日を切り開きたいのであれば、支持されなかった仮説よりも、支持された仮説が何であるのかをいち早く理解することが、なにより大切である。
なぜならば、その支持された仮説こそが、新世紀の新しいビジネスの核となるからである。
■勝ち残ったのは誰か
ありがたいことに、eビジネスで起きた事象はすべて加速された時間軸、いわゆる「ドッグ・イヤー」(犬の加齢が人間の7倍で進むことからできた表現)で起きている。
通常であれば、数年かかるこうした変化が、きわめて短時間の中で起きたわけで、まるで映画を見るように凝縮された時間で事実を理解することができる。とくに、日本のドットコムカンパニーで起きている一連の出来事は、まるでハリウッド映画を見るようである。派手なアクションはもちろんのこと、金、女性問題、なんでも有りと、観客にとっては飽きる間もなく物語が展開するエンターテインメントにさえ見える。
が、しかし、忘れてならないことは、ハリウッド映画同様に最後はヒーローが勝ち残っているという事実である。映画と同様に圧縮された時間軸で、そのヒーローを確認することができるとは、なんとありがたいことではないだろうか。
すでに、クラッシュを通じて第1ラウンドの勝ち負けの結果は出ている。21世紀の優良企業になる要素をここに学ばない手はないだろう。ビジネスの世界で生きていくためには、この映画の面白さに酔っている余裕はない。自らがビジネス界のヒーローになるためには、勝ち残ったヒーローたちに学ぶことから始めるべきである。
では、勝ち残ったヒーローは誰なのか。これは、株式時価総額の推移を見れば明らかである。
株式時価総額とは、株価に、市場で流通している株式の数を乗じたものであり、将来にわたってその企業が生み出すキャッシュフローへの期待値ともいえる。時価総額はその企業が持続的な成長を果たす可能性が高いと判断された場合には高くなる。どんなに時代の最先端の製品、サービスに従事していようとも、持続的な成長が難しいと判断されると、時価総額は高くはならない。
たとえ、一時的に高い時価総額がついてもそれを維持することは難しい。ネット・バブルというような状況が発生してしまったのは、持続的な成長は難しいと判断されたからである。
大切なのは、経営力を発揮して、一時の時流に乗って売り上げや利益が激しく変動することのないように努めることなのである。すなわち、経営力が問われているのである。ビジネスとマネジメントは異なる。この大原則を忘れてはならない。
■GEは過去最高の業績
2000年にキャッシュフローでナンバーワンと評価されたのがGE(ゼネラル・エレクトリック)である。持続的な成長という点でGEのレコードはすばらしい。アメリカの景気低迷が叫ばれる中で、GEは2000年度も対前年比16%増の1,299億ドルの売り上げを達成し、これは過去最高である。純利益も19%増えて127億ドル。これもまた過去最高である。
GEはこのような驚異的な業績を、単にいわゆる「オールド・エコノミー」の枠内だけで達成したわけではない。GEは1999年以来ネット・ビジネスに集中的な取り組みを行い、2000年には『インターネット・ウィーク』によって「e-business of the year」に選ばれているほどである。
それは後述するように、GEがインターネットを既存事業革新のイネーブラー(ある物事を実現する手段)として利用しているからなのである。GEは身をもって、ネットであろうと、非ネットであろうと、経営力の有無が企業の時価総額を、そして持続的な成長を決定することを示している。
そこで今回はGEに持続的な成長の秘訣を学ぶことにしよう。
GEの強みの源泉をまとめるにあたっては、1989年以来、GEのリーダーシップ育成に外部の人間としてかかわる中で得た経験、知識を十分に活用した。したがって、通常のビジネス書・雑誌等では知らされていないGEの強みの実像をお伝えできれば、と思っている。