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2001.02.02

 1990年から2000年にいたる10年間は「失われた10年」であったという言い方が最近よくされるようになった。バブルの崩壊と共に始まったこの10年間、日本経済は長期的な景気の低迷(リセッション)に苦しみ、明るい展望が開かれなかったために、このような表現が使われている。

 確かにここ数年は、日本経済に関して暗い話題ばかりが続いた。バブルの崩壊後、低迷する日本経済を改革する道は、かつてあれほどの自信をもって語られた日本特殊論(市場経済に依存しない日本的経営の優位性を強調する議論)を否定することだった。「ビッグバン」が行われ、日本の金融市場は開放された。

 「グローバル・スタンダード」(ビジネスを行う上で従わないといけない世界のルールを意味する和製英語)という言葉が企業界で頻繁に交わされ、日本的なルールを廃して世界と共通のルールで企業を運営することが必須であるとの議論が巻き起こった。国際的な競争、国際的なルールにさらされて経営の建て直しが不可能になった企業は、市場からの撤退を余儀なくされた。97年からは大手金融機関の経営破綻が続いた。

 金融機関と並んで日本企業の大きな変化を象徴するのは、かつては北米市場に積極的に進出し、貿易摩擦の一因となった自動車メーカーであった。企業統治形態(資本所有という観点での統治=ガバナンス)が10年前と同じなのは、今やトヨタとホンダの2社しかない。

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 このような危機的な状況に直面する中で、企業はさまざまな改革に乗り出している。しかしその多くは「ボトムライン・マネジメント」(コスト等を圧縮して、売り上げが同じでもできる限り純益が残るようにする)による業績改善である。日産が原価低減によって黒字化を達成したのはその好例である。もちろん、「ボトムライン・マネジメント」は事業効率性を高める上で必須だが、それだけに頼った改革の結果は縮小均衡であって、企業の大きな成長は期待できない。

 したがって企業は「ボトムライン・マネジメント」を徹底する一方で、「トップライン・グロース」(売り上げの上昇)を達成しなければならない。その時、企業の大きな成長が生まれる。
 そして「トップライン・グロース」は革新的なサービス、製品を競合他社に先駆けて市場に提供することによって実現する。

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 「経営者の使命は、製品を生産することにあるのではなくて、顧客をつくり出すための価値の満足感を提供することにあると考えなければならない」と記したのはマーケティングの大家T・レビットである。

 革新的なサービス、製品は、顧客に新しい価値の提供をなんとか図ろうとする懸命な努力の中で生まれてくる。企業は製品、サービスを生み出すためのシステムではなく、価値を創造するシステムであり、製品、サービスはそれを適切な形にパッケージ化したものにすぎない。

 企業はすぐれて価値創造システムなのである。企業は常に新しい価値の創造を目指して、活動を進めなければならない。そしてそのためには、企業の知的資産、とりわけその重要な構成要素である「知的能力の高い人材」がどれだけ揃っているかということが、決定的に重要である。

 われわれは、知的資産が最も高い価値として評価される知識情報化社会に生きている。貨幣が貧富の基準であった20世紀には、貧乏とはお金のないことであり、貧乏から脱却する道はお金を稼ぐことであった。しかし知識情報化社会においては、貧富の基準は知識のあるなしで、貧乏がいやであるならば知識の向上に努めなければならない。

 21世紀の知識情報化社会においては、どれだけの知識を有し、活用しているかが企業の競争優位性を決定的に規定する。

 そのことを一人一人の社員が認識し、新しい価値の創造を目指したとき、「トップライン・グロース」への道が開けてくる。

 そしてそのような認識を徹底させること、個々の社員に知識向上、発揮に最適なシステム、構造をつくりだすことこそ、今、企業トップ・リーダーの重要な使命なのである。

(終)

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