【Part9 中西輝政先生の情報収集術】
中西先生とは、ある勉強会のメンバーとしてはじめてお目にかかったのです。
その時は、丁度、湾岸戦争の最中で、新聞やテレビなどと同じく、論壇誌もまた湾岸戦争一色であり、数々の知識人や外交評論家のなかでも、中西先生は、ひときわ切れ味の鋭い分析をジャーナリズムで展開されていました。
そうした状況で、中西先生にお会いしたのですが、先生がその会でいろいろな話をされていて、それで分かったのは、先生は当時のホワイトハウスや国務省のスタッフの何人かときわめて親しく、その関係でさまざまな情報を得ていたということです。
そうした特殊な情報をもとに、さらに日本の学者のなかでは他の追随を許さない外交史にかかわる学問的知識や軍事に関する造詣によって、中西先生はきわめて適確な事態の分析をされていました。
当時、中西先生のおっしゃった、湾岸戦争は、ブッシュ大統領のクーデターである、という説(要するに、湾岸戦争は大統領個人のきわめて強力なイニシアティブによって、スタッフや閣僚の反対を押し切って引き起こされたものであるということ)は、後に詳細な政策決定過程のプロセスが発表されると、まさしく正鵠を得たものであることがあきらかになりました。
中西先生の、そうしたバックボーンを見て、私はうちのめされました。
いくら、自分で多くの、内外の新聞を集めても、直接大統領の補佐官に話を聞ける中西先生に到底かなうわけがない。
さらには、情報を分析する背景、つまりは知的な蓄積についても自分はかなうわけがない。
その、当然の事実に直面したのです。
無論、戦争を発動したブッシュ大統領の意志や動向も大事でしょう。しかし、それと同様に、フセイン大統領もまたもう一方の主役である。そこにイギリスやフランスといった大国もからんできます。