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目  次

Part1
ひと月百冊を読み、三百枚を書く

Part2
限界まで働かずに、何の甲斐があるのか

Part3
本を読むときに大切な「こころ構え」

Part4
「読む」とは何か

Part5
ページを「折る」

Part6
「抜き書き」の大きな効用

Part7
テレビに情報価値はない

Part8
新聞は朝日、産経、ヘラトリ

Part9
中西輝政先生の情報収集術

Part10
自分の「情報戦略」の見直し

Profile
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portrait
福田和也 文芸評論家・慶應義塾大学助教授(9/全10回)
2001.05.31


【Part9 中西輝政先生の情報収集術】
 中西先生とは、ある勉強会のメンバーとしてはじめてお目にかかったのです。
 その時は、丁度、湾岸戦争の最中で、新聞やテレビなどと同じく、論壇誌もまた湾岸戦争一色であり、数々の知識人や外交評論家のなかでも、中西先生は、ひときわ切れ味の鋭い分析をジャーナリズムで展開されていました。

 そうした状況で、中西先生にお会いしたのですが、先生がその会でいろいろな話をされていて、それで分かったのは、先生は当時のホワイトハウスや国務省のスタッフの何人かときわめて親しく、その関係でさまざまな情報を得ていたということです。

 そうした特殊な情報をもとに、さらに日本の学者のなかでは他の追随を許さない外交史にかかわる学問的知識や軍事に関する造詣によって、中西先生はきわめて適確な事態の分析をされていました。

 当時、中西先生のおっしゃった、湾岸戦争は、ブッシュ大統領のクーデターである、という説(要するに、湾岸戦争は大統領個人のきわめて強力なイニシアティブによって、スタッフや閣僚の反対を押し切って引き起こされたものであるということ)は、後に詳細な政策決定過程のプロセスが発表されると、まさしく正鵠を得たものであることがあきらかになりました。

 中西先生の、そうしたバックボーンを見て、私はうちのめされました。
 いくら、自分で多くの、内外の新聞を集めても、直接大統領の補佐官に話を聞ける中西先生に到底かなうわけがない。

 さらには、情報を分析する背景、つまりは知的な蓄積についても自分はかなうわけがない。
 その、当然の事実に直面したのです。

■いくらたくさんの新聞を集めてみても、大統領の補佐官に直接話を聞くことにはかなわない……。

 私は、考えました。
 考えたすえに得た結論は、きわめて平凡なものです。
 自分は自分のやれる事をすればいいのだ、ということ。

 たしかに、私は中西先生のように、最深部の重要な情報を得ることはできない。さらには、学問的知識にのっとった議論もできない。
 だとすれば、自分はこうした事態について、何も書くことができないのか。

 けして、そうではありません。
 なぜならば、湾岸戦争は、けしてホワイトハウスの最深部だけで行われているわけではありませんし、また外交や軍事だけが、その切り口でもないからです。

 無論、戦争を発動したブッシュ大統領の意志や動向も大事でしょう。しかし、それと同様に、フセイン大統領もまたもう一方の主役である。そこにイギリスやフランスといった大国もからんできます。

 さらにいえば、進攻されたクウェートもまた一方の主役であるし、スカッド・ミサイルを打ち込まれつづけていたイスラエルもまた大きな役回りを演じていました。
 その中で、大国のなかで、唯一手を拱いていた日本のあり方が、問題になるのは云うまでもありません。

 あるいは、湾岸戦争は、史上最初の、メディアによる完全中継をされた戦争でもありました。
 戦争のはじめから終わりまで、夜空に飛び交うミサイルと対空射撃の火花、ミサイルにつけられたカメラによる、命中の実況中継。さらにはイラクの戦車隊が、アメリカの爆撃によって片端から破壊されていくさま。

 こうした情景が衛星を通じて中継をされたというのは初めてのことです。
 それは、ある意味で、茶の間がそのまま戦争の最前線となったことを意味しているのです。

 こうした要素を考えてみれば、湾岸戦争を書くのにも、いろいろな要素があるのが分かりますし、その中には、いくつも興味深い論点があることも分かります。

(Part9 終)

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