【Part6 「抜き書き」の大きな効用】
ですから、抜き書きの利益は、ただメモとして有用だということに止まりません。
よく質問を受ける、難しい文章を読んだり、速く読んだりするためにも、抜き書きはとても役に立ちます。
誰にでも、ある著者の本が読めない、いくら読んでもわからないということがあります。
普通は、そういう本は、表現力が稚拙なのだ、と切り捨てて構わないのですが、しかし必要上どうしても、読まなければならない時もあります。
そういう場合にどうしたらいいのか。
文章とは一体何でしょう。
ごく大雑把にいえば、文章は、書き手が考えている(感じている)ことを、文字に写したものです。
だとすれば、文章がわからない、ということは、すなわち、書き手が何を考えているか分からない、ということになりますね。
逆にいえば、何を考えているかが分かれば、文章もわかるはずです。
ではどうすれば、書き手の考えが分かるのか。
抜き書きは、書き手の考えを理解する上で、とても役に立ちます。
もちろん、ただ写すのではなく、書き手になったつもりで、大袈裟に言えば憑依をして、書いて行かなければなりません。
楽器を習ったことがある方はお分かりになると思いますが、ギターなどを練習する上で、好きなミュージッシャンのフレージングなり、手癖なりを真似た、つまりはコピーした体験があると思います。
そういう形で、ギターを真似ると、ただその曲を弾けるようになるだけではなく、元の演奏者の和音に対する解釈とか、分解の仕方が納得できるような気持ちになったことがあると思います。
というようなことを考えて書いていけば、ただ、目前の文章を写すことが、六弦を押さえて、凝った和音を鳴らす、モダン・ブルースのコピーとまったく変わらない、むしろより以上に困難でデリケートな作業だと分かるでしょう。