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第1回
なぜいま「家」なのか

第2回
リビング、子ども部屋の問題

第3回
夫婦の寝室を立派に

第4回
情報処理の場となった「家」

第5回
家づくりは家族の絶好のテーマ

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(1/全5回) 2000.11.27

家族、が危機に瀕している。
おそらく今の日本にとって最も切実な問題かもしれない。
その再生への回答を、家、という視点から試みる。
(聞き手:丸山孝)

【第1回 なぜいま「家」なのか】
―― たまたま書店でご著書の『家族を「する」家』という本を見かけて、これは非常にいいテーマだなと思いました。するとそのあとに、何度も新聞広告を見かけて、やはり好評なのだな、と。いま家族の崩壊が問題となっていますが、家族を再生する上で、家という「器」をテーマにした議論が非常に少ないのが、とても不思議だと感じます。
 それで、まず最初にこの本をお書きになった動機について教えてください。

藤原智美 この本の3年前に『「家をつくる」ということ』という本を書いたんですね。ちょうどそれを取材して書き上げようとした頃に、97年神戸でいわゆる酒鬼薔薇事件が起こったんです。それからちょっと原稿をストップして書き替えたんですね。

 というのは、奇妙な少年事件が起こるということが、住まい、あるいは家族の問題と密接に関わっているだろうという気がしたのです。僕の本で扱っている家の問題というのは、基本的には子育ての問題なんです。

―― そうですね。

藤原 結婚したばかりのカップルとか、もう子どもが自立して出ていった中高年の熟年夫婦の家というのは、とりあえずあんまり想定してないんです。

 というのは、僕はこう考えたんですね。いろんな少年事件が起こる。すると、いま10歳の子どもがあと10年した20歳になった時に、もしかすると電信柱の陰で僕を狙って出刃包丁で刺すかもしれないわけです。しかし逆に、その子が20歳になった時に、僕が足腰が弱って駅で転んだとき助け起こしてくれるかもしれない。そのどちらになるのか分からないんですね。

 つまりいまの子どもたちが必ず大人になって社会に入ってきて、われわれとどっかで関わる可能性があるわけです。そのとき、住まいのありかたがその関わりかたを大きく左右してしまうだろう。その実感が、動機としては大きかったと思うんですよ。

―― たしかに少年事件が増えたと感じられますし、あと学級崩壊という言葉が話題になったように、家庭のみならずあらゆるところで崩壊現象が起きています。その中で抽象的な精神論はあっても、器としての家については日本の場合戦後ずっとないがしろにされてきたと思うのです。ある種、手の打ちようがないみたいなところがありました。けれど、それがようやくテーマに出来るようになったのだな、と時代の変化を感じたんです。

藤原 そうですね。家というのは極めて具体的ですよね。建物ですからね。
 時代の変化という意味で言うと、極めて具体的な家というものをテーマとして取り上げたのは、1つはこういう理由があると思います。かつて家族が一緒に仕事をしていた時代がありますね。農家や、商店、町工場などがそうです。その時代はみんなが一緒に仕事をすることによって、つながっていたわけですね。

 しかし、これがなくなった。お父さんが稼いできて、お母さんが家を守るという図式になってきた。

 もう1つは「食」というものがあって、そこの周囲に団欒がありましたよね。これもいまは家の中に団欒がなくて、むしろファミリーレストランとか、もっというとキャンピングカーの中とか。つまり家の外にあるわけですね。それも、ごくたまのイベントみたいになっている。

 仕事、食、これがいわば家の外に流失したわけです。それから、子育てもよく考えると、塾、お稽古事、スポーツクラブ、学校、と実は全部家の外にあるんです。

―― なるほど、どんどん家の中から流失してしまっていますね。

藤原 この3つ、つまり仕事、食、子育てが外に流れていった。その後に、家の中に何が残ったかということなんです。それは極めて抽象的な人間関係としての家族なんですよ。
家の中で「人間関係」という抽象的なものが、ものすごくクローズアップされたんです。でも、いままではそんなに意識しなくてよかったんですよ、家族関係について。家族をすることが忙しかったですから。

 でも、いまはそうじゃない。だから家の中に入ると、「私たちの家族はどうなんだろう」ということが、クローズアップされるし暴露されてきたということだと思います。

 家族というのは、人間関係において、最も抽象的なことなんですね。この抽象的なものを解読するためには、何か具体的な手掛かりが必要で、その手掛かりというのがもしかすると具体的な建物にあるのではないかと思うんです。

―― 家族の関係性をリアルに見つめなければいけなくなったということは、これはある意味で非常に辛いことですね。そのときハードウェアとしての家の、造りとか使い方が変わることによって、家族関係を再生できるんじゃないかという視点が、『家族を「する」家』という本の非常に興味深いメッセージとして一つあると思うんです。

(第1回 終)

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