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Part1
覗き見って好きですね

Part2
フィクションにしか関心がない

Part3
その気になりやすい質なんです

Part4
導くべき場所はありません

Part5
ミステリーは懐かしい友だちに会う場所

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portraite
(4/全5回) 2000.12.11  

【Part4 導くべき場所はありません】
―― また、少し話を戻しますが、書かれるときの時間帯は決まってないとお聞きしましたが、場所とか、こういうふうにしてから書くとか、1日何枚だけ書くとかって、スタイルは決まっているんですか?
 
江國香織 いえ、決まってません。ただ、気を散らしやすい質なので、自分の部屋で音をなくして書きますね。例えばホテルに入れてもらったりすると、落ち着かなくて、全然進まないんです。つい、窓の外に見える何かに興味を惹かれて抜け出してみたりとか、全然落ち着かないので。自分の家の中でさえも、違う部屋でたまたま仕事をしようとすると、どうも気を散らしてしまうんですね。逃げたいのかもしれない(笑)。
 
―― ということは、書くときは、書きながらできていくタイプですか、それとも全部組み立ててから書くタイプですか?
 
江國 書きながらできていくんだと思います。
 
―― 書きながらできていく。しかも、頭から書いていく? それとも書いていく途中で構成するんですか?
 
江國 えーと……。7割方、頭から。というのは、連載が多いからですよね。書き下ろしをやりきるパワーと厳しさがいまひとつなくて。

 書き下ろしをしようとすると、どうしてもどこかで止まっちゃって、違うものを書きたくなったり、自分がやろうとしていることが、実はあんまり面白くないんじゃないかという恐怖にかられてしまうんです。そうなると、疎遠になっちゃって、なかなか終わらなくて、何度も書き直して冒頭ばっかり30個もできちゃったり。

 だから、連載の形を取るほうが仕事がしやすいので、否応なく最初から書くことになるんですけど。

―― 連載の場合に、いいことであり悪いことなのは、途中でいろいろな反応が入ってきますよね。担当編集者だけじゃなくって、他の編集者が読んだり、あるいは読者が読んだり。そういうのには左右されますか、それとも全然気にならないほうですか?
 
江國 都合よく左右されるほうだと思いますね。
 
―― ポジティブに取っていくということで、都合よくですか、それとも……。
 
江國 そうですね、ポジティブに。いいと言ってくれると、お世辞でも何でも、さらにその気になる。よくないって評は本人にはたぶんあんまり入ってこないんですけど。でも、そう、そう、「ワンパターンだ」って言われたことがあります。これは、衝撃ですね。ワンパターンだと言われると、一瞬立ち直れなくなる。もっと具体的に言ってもらえるといいんですけどね。 

 「ワンパターンだ」以外のことに関しては、だいぶ都合よく、「それは分かってない」というふうに思う。「私がしたいのは、こういうことなんだ」っていうふうに、考えられるほうですね、たぶん。

―― 保坂和志さんかな、この間、話してたんですけどね、彼の連載の中に女の子が何人か出てきて、それを読んだ男友だちに、「あの子、いいね」とかって2人ぐらいに言われると、自分もそれが気に入ってしまって(笑)、そればかり書いて、バランスが崩れたりするって言っていました。そういうのはないですか?

江國 本当? そういうのはないですね。ああ、そうなんですか、意外な感じ。人の好い方なんですね。

―― でも、僕みたいに評論を書いていても、そっちをやるつもりじゃなかったのに、「あの話は面白い」と言われると、ついついそれを大きくしちゃったりすることがあるんですよ。

 こんなことを、作家にお伺いするのはおかしいかもしれませんが、いろんな作家がいますけれども、その中で、ミステリーなどを除くと、クォリティーと、いわゆるセールスが、一番安定した立場にいらっしゃいますよね。そのことはどういうふうに思われます? 全然関心ない、ということもないと思うんですけど。

江國 ……と、いうことはないです。ただ、クォリティーについては、もちろん鋭意努力をするんですが、それ以外の部分は、私には如何ともしがたいという気持ちが、最初からあって。でも、今、すごく読者もついてくれていて、サイン会や講演会をすると、遠くからも来てくださるというのは、とっても幸運に思います。
 でも、どうでしょうね。それ、何かが間違ってるとは思うんです、私は自分で。

―― そうですか?
 
江國 うん、思います。分かんないな、間違ってないのかもしれないな。あの、うん……でもきっと、間違っているような気がする。

―― その「間違ってる」ということにかかわるかもしれませんけど、ご自分でそういう支持を受けている原因というか、ポイントはどのへんだと思いますか?
 
江國 ……うーん、分かりやすいところだと思います。何にも導くべき場所を持ってなくて、なおかつ分かりやすいというところじゃないかなぁ。

―― その導くべき場所がないっていうのは、なかなか面白いし、深い話ですよね。皆、どっかに導こうとしますからね、うん。
 でも、分かりやすいけれども、ある意味で非常に複雑ですよね。分かりやすさの中でしか出せないような、さっきの「こんな女なのに、何で興味を持っちゃうんだろう」というような、シンプルなことでしか言えない複雑な真実ってあるじゃないですか。それが書かれているように思います。
 
江國 そう考えると、多くの人が支持してくださっているというのは、間違っていると思う(笑)。

(Part5 へ続く)

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