【第4回 パワー・ポリティクスをどう見るか】
○宮崎哲弥 枝野さんが非常に面白いというか、いいなと感じたのは、やはり『朝まで生テレビ!』で、「アメリカが敵国になるということも、想定の中に入れなければいけない」と発言されたでしょう。こういう発想の政治家は、自民党も含めて非常に珍しくないでしょうか?
●枝野幸男 そうなんですか。
○宮崎 珍しいと思います。こういう具合にパワー・ポリティクスのイロハをきちんと押さえている政治家は上の世代には皆無だし、同じくらいの世代でもああいう風に断言できるのは稀です。とくに「リベラル」陣営にこういうクールな見方のできる人が出てきたのは画期的だと思います。
民主党内にはどのくらいいらっしゃいますか。
●枝野 安全保障に関心をもっている人の中には結構いますよ。半分ぐらいは。言葉にして言うかどうかは別として、発想はもっていると思いますよ。
○宮崎 保守であれリベラルであれ、議員の中でパワー・ポリティクスという行動原理を踏まえた平和戦略を練れる人が増えていくということはこれから非常に大切なことだと思いますね。
●枝野 特にリベラルの側に必要だと思います。
○宮崎 うんうん。
●枝野 これもまた歴史的な不幸として、リベラルとハト派というのが必然的に結びついていて、軍事のことを勉強したり議論したりすること自体を否定してきましたよね
、この国は。だから意外と軍事問題について知らないんですね。
いま広島市長になった秋葉さんはかつての社会党にいて、この方はハト派サイドから安全保障のことをしっかり勉強して、同じ土俵で議論ができる数少ない人だったのですが、その後ハト派と言われる国会議員から安全保障を専門的な知識をもって議論できる人は、まったくと言っていいほどいなくなって、ものすごくよくないことだと思いますね。
だから、全部議論がすれ違いになるわけです。初めから闘えないわけですよ。知識のレベルが違うから。でも安全保障を語る以上は、それがいわゆるタカ派的な立場からであれ、ハト派的な立場であれ、保守からであれリベラルからであれ、最低限もっていなければならない知識のレベルはあるはずです。それが欠けているのは、非常によくないなと思いますね。
その最低限の知識として、残念ながら今の国際社会はそれぞれの国家が、自国の国益のためには、いろいろ嘘をついたり裏切ったりということがあり得るのです。アメリカだから裏切らないという保証はどこにもないというのは、当然の前提知識だと私は思っていますけれどね。
○宮崎 そういう意味では、日本の保守派は外交、軍事の面では大変柔弱ですね。ポリシーに一貫性もないし。
●枝野 保守のほうもひどいなと思いますよね。
○宮崎 そうですね。だから国内政治においては自民党的体制と社会党的反体制は一種の補完関係にあったのでしょうが、対外的な政治、外交や軍事の面では双方とも真っ当な独立国家としてやってこなかった。
●枝野 やっていないですよね。
○宮崎 自律した国家目的や独立的な国益を中心とした政策編成ができていなかったんですね。私は枝野さんのようなリベラルの登場に本当に期待するんです(笑)。枝野さんが外務大臣になれば、相当なタフなネゴシエーターになれるんじゃないかと思える。ハード・ライナーとして突っ走るばかりではなく、硬軟取り混ぜて対応する交渉が可能なのではないかと。
そういう枝野さんからみて、例えば野中広務氏の対中国の姿勢はどう映っています?
●枝野 北京との外交関係や北朝鮮外交においては、なぜこんなに弱いのだろうと思いますよね。なぜなのかといろいろ思うのですが、結局、人間関係と情で生きているからではないでしょうか。
つまり、古い保守の人たちというのは、選挙構造を含めてあいつが好きだ嫌いだとか、 挨拶があったなかったという人間関係でけっこう動いている世界のようじゃないですか
。特に自民党の中は。政策ではない、そういうことが決め手になっている。
○宮崎 「アジアは一つ」でいけると思っているんだよね(笑)。アジア的親密性みたいな情緒が際限もなく拡大していっているという感じですかね。しかし、ある意味で「アジアはそれぞれ」でもあるんですよね。
●枝野 それは私自身も気をつけなければいけないと思いながらやっていますが。韓国へ行っても、北京へ行っても、台北に行っても、それぞれの国にとっての日本外交の重要性はものすごくありますから、ものすごく大事にしてくれるわけです。ポッと出の新人議員が行った時でもね。
その中からいろいろな人間関係ができますよね。それが変な貸し借り関係になるんでしょうね、この人に強く言えないとか。しかも向こうは外交上手ですから、普段は持ち上げてくれて、大事なところでガッと言ったりされると、手玉にとられるということがあるのではないでしょうか。