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第1回
日本的リベラルのあり方

第2回
国家をどう見るか

第3回
憲法第9条をどう見るか

第4回
パワー・ポリティクスをどう見るか

第5回
アジアとの関係をどう見るか

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(1/全5回) 2000.11.27

野党第一党というだけでなく、自民党に替わって
政権政党となる可能性があるのは、やはり民主党であろう。
かつて日本に根付いたことのない「リベラル」勢力の基本理念を、
民主党きっての論客・枝野幸男氏に聞く。
(聞き手:宮崎哲弥)

【第1回 日本的リベラルのあり方】
宮崎哲弥 今年の衆議院選挙では、民主党は一応善戦、辛勝といえるんじゃないですか。まあ厳しい見方をすれば敗北なのかもしれないけれど……。

枝野幸男 主観的には負けだったと思います。ただ、次につながる第一歩にはなりましたね 。

宮崎 敗北だったとしても次のステップにつながるような、そんな負け方だったという感じもします。
 というのは「リベラル」という政治勢力は日本では今まで地歩を築いたことがないんですね。しかしリベラル派が次の世紀に向けてどの程度の勢力を占めることができるかが日本政治の未来にとって非常に重要な分れ目となることは間違いありません 。

 さて本日、枝野さんに伺いたいのは、そも「リベラル」とは何ぞや、ということです。とくに長期的な国家ヴィジョン、外交、軍事を中心に訊きたいと思います。

枝野 個人的にどう考えているかというと、「選択肢を多くもてる社会がいい社会なのだ」という価値観をもつかどうかだと思うのです。保守主義が「共通の価値観をみんなでもとう」という方向性であるのに対して、それとは逆に「価値観はそれぞれ違っていた方がいい、違うことはいいことなのだ」ということを認める社会だと思っています。

 ただ、多様な価値観をもとうという話は、一本の旗のもとに集まれというのに比べて、わかりにくい面があるわけです。だから日本では、今まできちんとした勢力になりきれずに来たというのは、そこに原因があるんだろうと思います。

宮崎 アメリカのリベラルだと、かつては黒人をはじめエスニック・マイノリティ公民権の問題が大きな争点を構成しました。いまは妊娠中絶などジェンダー関連の争点がありますね。

枝野 おっしゃるように、アメリカの場合は人種の問題など、非常に目に見える形で、リベラルという勢力が主張を伝えていくためのテーマが存在したわけです。しかし日本にはそういう明確な争点は、大きなテーマとしてはないですよね。

 もちろん少数民族の問題もあるし、女性の問題もあるけれど、それがメイン・イシューになる社会状況がそもそも存在していませんから、リベラルという価値を掲げて票を集めようということ自体がそもそも難しいと思います。

宮崎 とくに中選挙区制から小選挙区制にかわって、マイノリティーの立場や意見をくみ上げていくことがますます難しくなったんじゃないですか。

枝野 マイノリティーはそれぞれ一種のシングル・イシューをみんなもっているわけです。たとえばある一部の女性には、選択的夫婦別姓というのはものすごく大きなテーマである。あるいは外国人参政権の問題や、同和問題、障害者の方々のこともそうでしょう。ただそれを個別にやるだけでは選挙は勝てませんし、したがってリベラルは大きな勢力になれない。

 ですから、そのことがマジョリティーにとっても良いことなんだということを、説得しなければならない。その点が重要でしょうね。

宮崎 そうそう。

枝野 たとえば経済政策にしろ、今までのような中央集権画一型の規格大量生産社会ではもたないわけです。ですから「少数意見を大切にする価値観をもたないと、日本の産業はもたない」という問いかけをしていくことには大切な意味があるし、そのことを通じて民主党の存在が大きくなっていくということではないでしょうか。

宮崎 おっしゃるとおりで、一部の人にしか関係ないように見える問題でも、トータルとして社会の自由度を上げ、選択の幅を広げているのだ、それこそが民主党の理念なのだというアピールの仕方があると思うのです。しかし、それがなかなかうまく一般の人たちに伝わっていかないというのは、国民の大多数はもう自由や選択肢は十分だ、むしろ秩序や規制が欲しいよと考えているんでしょうかね。

枝野 むずかしいところがあって、まだまだマジョリティーだと自分が思っている人たち、あるいは従来の価値観がいいんだと思っている人たちに対して、入口でガードされてしまう。それで広がっていかないし、伝わっていかないという問題が残っています。民法改正と言っただけで横を向いてしまうとか、外国人参政権と言っただけでバリアをはってしまう人が非常にたくさんいますからね。

 その人たちに、今までの価値観ではこの国はもたないということを伝えていくためには 、シングル・イシューで入り込んでいくよりも、たとえばその人たちが大切に思っている経済政策のところから始めていくとか、あるいは家族を守ることからむしろ入っていって、そこに多様性、市民的自由が大事なんだということを重ねていくという手法のほうが、日本ではいいのかもしれませんね。

宮崎 その通りだと思うんですが、そうやって搦め手からいくと保守派とほとんど一緒、差異がなくなってしまうのでは(笑)。社会政策の面は特にそうですね。

枝野 つまり、昔のように二分化できないところがあって、発想が正反対でも、現象面で出てくるところが似てきてしまうという点があるわけですね。そのことによる誤解もたしかにあると思うんです。
 その悩ましさを抱えていることは確かですが、ひとつひとつ丁寧に伝えていく中で、人々に少しずつ理解を深めていただくということなのでしょうね。

(第1回 終)

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