執筆、インタビュー、テレビなど、幅広いジャンルで活躍する
エッセイストの阿川佐和子さん。
しなやかでユーモアあふれる感性の裏にあるものは?
日々の様子、仕事観、阿川家の掟(?)など、その素顔を探る。
(聞き手:丸山孝)
【第1回 非・上昇志向?】
―― 今日は阿川佐和子さんに来ていただきました。どうもありがとうございます。
阿川佐和子 こちらこそ、お招きいただき、ありがとうございます。
―― まず身近な話から。というのも、私から見るとちょっとミステリアスな感じがするのですが、普段どんな生活をしていらっしゃるのか……。
阿川 私がミステリアスですか?
―― 生活感があるような、ないような。
阿川 限りなくミステリアスから対極にあると言われつづけているんですけれども。
―― そうですか(笑)。いや、ちゃんと朝起きてらっしゃるんだろうかとか、夜、どのくらい睡眠時間をとっているんだろうとか……。早起きのほうですか?
阿川 いいえ。放っておけば、"いつまでも寝てたい質(たち)"です。なんか寝過ぎて原稿ができてなくて、本当に皆さまにご迷惑をかけています。でも、寝れば寝たで自己嫌悪に陥って、落ち込むと眠くなるし(笑)、難しいところなんですけれども、一応毎日、7時間ぐらいは睡眠とっていますね。
―― じゃあ、そんなに長いほうでは……。朝型ですか、夜型ですか?
阿川 どっちでもないっていうんでしょうか。夜は頑張れないし、朝は起きられないし。どうしようもなく原稿を書かなきゃならないと覚悟した時には、床や椅子で寝て、起きてはパソコンに向かいっていうのを繰り返して、そのまま朝を迎えることもあるし。早く寝てしまって、恐怖のあまりにガバと起き上がって朝5時ぐらいから書きだすってこともないわけではないですし。大変不規則な生活をしています。
―― 寝ているか働いてるか、という感じなんですか?
阿川 これはモノを書いている者の端くれといたしましては、皆さんそうだと思うんですけど、「結局遊んでるんじゃない」って言われるけれども、ずっと「原稿があるから、あれ考えなきゃいけないしな」っていう……。書いてなくても考えていなくても常にモヤモヤモヤモヤしているっていうところはありますよね。
だから、完全にオフという時間は、つまり翌日出かける仕事が何もなく、インタビューの準備もしなくてよく、原稿の締め切りはとりあえず明日切迫したものはないっていう日は、たいへん幸せな気持ちがしますけれども。そういう時は少ないですね、確かに。
―― 完全なオフは少ないんですね。
阿川 少ないですね。
―― じゃあやっぱり、ハードワーカーですよ。
阿川 人に言わせるとそうらしいです。だから、結局仕事は嫌いではないんじゃないかと、自分で思いはじめているんですけどね。
―― というのは、こうやって振り返ってみると、ずいぶん仕事量が多いっていうか。まず執筆のほうがありますし、テレビのほうで司会とかありますし。最近『カラフル』という映画では女優もされて。
阿川 あれは一時的なものです(笑)。
―― と、いつも笑顔でいらっしゃるけど、でも本当はそう簡単ではない仕事量ですから、どんな生活をしているのだろうと?
阿川 でも、そうですね。「オフの時間に趣味でしていることはありますか」って聞かれると、何もないんですよ。常に新しい仕事を入れちゃったりするから、お稽古事に通うなんていうことは長く続きませんし。結局ブツブツ文句を言いながら仕事をやってるから、仕事をやっていることで生きる活力を得てるのかな、と自分自身でも思いますね。
―― 阿川さんがそういう意味で魅力的だなと思うのは、かといって、大手町でビシッとスーツを着こなして、朝から晩まで男の部下なんかを30人ぐらい率いているみたいな、いわゆるキャリアウーマンというのともまた随分違うということです。なにか、非常にしなやかな感じがするんですけれども。
阿川 そのキャリアウーマンというのは、言い方を変えれば「向上心がある方」っていうことですか?
―― いや、阿川さんにも十分あると思いますが(笑)。
阿川 私、向上心っていうものがあんまりないんですね。とりあえず目の前の引き受けた仕事はいい方向に持っていこうっていうか、面白いものにしたいという意欲はあるんですけれども、このステップの次にここに上がろうとか、「私はここで満足してないわ」っていうのは、あんまりないんですね。